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『ブラザー・ベア』ネタバレ感想&考察 |ディズニーが描く愛と贖罪の隠れた名作

『ブラザー・ベア』ネタバレ感想&考察 |ディズニーが描く愛と贖罪の隠れた名作

こんにちは、ゆーです!

 

今回の記事では、2004年3月13日に公開されたディズニー長編アニメーション映画「ブラザー・ベア」についてネタバレありで映画の感想&考察をお届けします◎

 

 

ディズニーの隠れた名作、というべき傑作。

東京ディズニーリゾートで取り上げられることもほぼなく、知る人ぞ知る作品になっていますが、ぜひ全員に見てほしい最高の作品だと思っています。

 

個人的にも小さな頃から繰り返し見ていて大好きなこちらの作品。

今回の記事では、そんな「ブラザー・ベア」の詳しい物語をネタバレありで丁寧に解説し、考察していきたいと思います。

 

ゆー

美しい自然の中で描かれる、ワクワクする冒険と兄弟愛、そして罪の物語。
早速見ていきましょう…!

 

 

映画概要・あらすじ(ブラザー・ベア)

劇場公開日米:2003年11月1日
日:2004年3月13日
監督アーロン・ブレイズ
ボブ・ウォーカー
制作チャック・ウィリアムス
上映時間85分

明るくやんちゃざかりの子グマのコーダは、旅の途中でお母さんとはぐれて独りぼっち。そんなある日、森の中で罠にかかって困っている大きなオスの熊、キナイに出会います。独りきりで心細かったコーダは、「一緒に旅をしてくれるなら…」という条件つきで彼を助けます。実はキナイは、ある事件のために“グレイト・スピリット(大いなる精霊)”の怒りに触れ、熊に姿を変えられた人間なのでした。そんな事とは知らず、コーダはキナイを兄のように慕い始めます。美しく、時に厳しい自然の中で、たくさんの動物たちやハラハラドキドキの冒険に出会ううち、いつしか彼らの間にはまるで兄弟のような絆が芽生えていきます。やがて目的地にたどり着き、コーダとキナイには運命の時が訪れようとしていました。

ウォルト・ディズニーが贈る、個性豊かな動物たちが大活躍する長編アニメーション。主題歌を始め、心に響く音楽を提供したのは、『ターザン』でアカデミー賞(R)に輝くフィル・コリンズ。大自然を舞台にワクワクする“冒険”と心暖まる“兄弟愛”を感動的に描いた物語です。

 

『ブラザー・ベア』はディズニープラスで配信中

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ディズニーパークと『ブラザー・ベア』

東京ディズニーリゾートで取り上げられることがほぼ無い…、と申し上げましたが、唯一『ブラザー・ベア』を感じることができる場所があります。

 

それは、2021年開業の「ファンタジーランド・フォレストシアター」

シアター内で公演されているショー「ミッキーのマジカルミュージックワールド」にこそ出演はしていませんが、シアター内に飾られたタペストリーにキナイとコーダの姿が描かれているんです。

 

初めてフォレストシアターを訪れて、このタペストリーを見つけたときは嬉しかった…!

 

▲タペストリー全景。可愛いです。

 

ぜひ東京ディズニーランドのファンタジーランド・フォレストシアターを訪れたときは、キナイとコーダの姿を探してみてください☺️

 

【ネタバレ感想】

以下より物語のネタバレを含みます

 

①3兄弟とグレイト・スピリット 

部族の習わしと3兄弟

はるか昔、マンモスが存在していた頃。

人間は自然とともに平和に生き、自然を司る精霊である”グレイト・スピリット”の力を信じ暮らしていました。

 

そんな時代に生きた、狩猟民族イヌイットの三兄弟ー、長兄のシトゥカ、次兄のデナヒ、そして主人公・末弟のキナイ

物語は、そんな三兄弟が魚を取りに行くシーンから始まります。

 

そう、舞台は氷河期の北アメリカ。

今から約400万年前から約1万年前までくらいの、はるか昔の時代を描いているんですよね。

ディズニーの長編アニメの中でも、これは異色の時代設定。

そんな物語の設定が、冒頭の語りで静かに伝えられていきます。

 

さて、キナイが所属する部族では、成人を迎えると村のシャーマン・タナナがグレイト・スピリットから授かったトーテムを授かる儀式を行います。

今日はキナイがその儀式を迎える日。

三兄弟はそんなキナイの儀式のために魚を取っていた、というわけです。

 

ここでそんな三兄弟の姿と共に奏でられるのが、”Great Spirits”という一曲。

物語の舞台である氷河期の北アメリカの環境、そこで暮らす人々の様子。

それらが全て直感的に伝わる、名曲です。

とりわけ個人的には日本語歌詞の👇️の部分が大好きですね…。

 

教えてグレイト・スピリット
あなたの持つ 知恵と愛のすべて
あなたにとって この地上に
生まれた命 みんな同じ兄弟だと

 

 

ゆー

まるで『ブラザー・ベア』の物語全体を示唆するかのような、壮大で素敵な一曲。
自然の描写もとても美しく、思わず見入ってしまうようなシーンです。

 

キナイが授かったトーテムとシトゥカの犠牲

いよいよ迎えたキナイの儀式の日。

逸る気持ちを胸に、キナイがタナナから受け取ったトーテムは、「愛」を象徴するクマでした。

 

ところが、受け取ったトーテムが気に入らないキナイ。

それもそのはず。彼にとってクマとは、人間を気まぐれに襲い、捕まえた魚を奪っていく、言わば”害獣”のような存在だったから。

そしてこの日も、儀式のために捕まえた魚が、クマによって奪われてしまっていたことに気が付きます。

 

周囲の大人たちに責められ、半ば自棄になったキナイは、「魚を入れておく籠を取り返す」と宣言し、クマの足跡を辿って先へと進んでしまいます。

心配に思い、後を追った兄シトゥカ、デナヒ。

そこで二人が見つけたのは、クマに襲われているキナイでした。

 

咄嗟にキナイを助けようとする二人。

もみ合った末に、最終的にシトゥカはクマを氷河の端に追い詰め、そして自らの命を犠牲にクマとともに氷河ごと川に落ちる選択を取るのです。

 

自らの軽率な行動の末に、愛する長兄を失うことになった、キナイ。

その後悔ややるせなさ、自分自身に対する怒り…。そういったものを到底自身で処理できるはずもなく。

全ての感情は、直接的にシトゥカの命を奪った、クマへの怒りに向いていくのでした…。

 

ゆー

まさか物語のこんな冒頭で、兄弟の一人が欠けてしまうとは…。
キナイの心中、デナヒの心中を思うと胸が苦しくなります。

 

キナイの復讐、そして…

悲しみと怒りに燃えるキナイは、クマへの復讐を決意

タナナやデナヒの制止も聞かず、ついにクマを見つけ、追い詰め、決闘の果にその命を奪います。

 

すると、グレイト・スピリットの一部となったシトゥカが現れ、キナイを人間からクマの姿へと変えてしまうのでした。

 

一方、復習に燃える弟を心配して追いかけてきたデナヒは、クマに変えられたキナイの近くに、キナイが身につけていた服とトーテムが落ちているのを見つけます。

シトゥカのみならず、キナイまで失った、と認識した彼は、今度こそ敵を討つためにキナイを襲ったであろうクマ=クマに変えられたキナイを追うことを決意するのでした。

 

ゆー

キナイをクマに変えたシトゥカの真意は。
そして連載していく復讐に終止符は打てるのか…。
ここから物語は大きく色を変えて、動き出します。

 

②コーダとの出会いと旅

グレイト・スピリットによりクマに変えられたキナイ

クマとして目を覚ましたキナイ。

混乱する中、タナナに人間に戻るためには「光が大地に触れる山に行き、シトゥカのスピリットと話す」よう伝えられます。

 

ところが、当然キナイは「光が大地に触れる山」のことなど知る由もありません。

近くにいた動物たちに道を尋ねるも、全く成果なし。

ヘラジカの兄弟・ラットとトゥークにも出会い、彼らに「実は自分は元人間で、クマに変えられたのだ」と説明しても、全く取り合ってくれず。

挙げ句、森の中の罠に引っかかり、身動きが取れなくなってしまうのでした。

 

ゆー

ヘラジカの兄弟が繰り広げる、ちょっと噛み合っていないノリツッコミのような会話が絶妙にコミカルで、見ていて癒やされるんですよね…笑

 

コーダとの出会いと旅の始まり

罠にかかったキナイの元に現れたのは、子グマのコーダ

サケが大量に泳ぎ、仲間とともに過ごせるという川「サーモン・ラン」に向かう途中で母とはぐれてしまったと語り、キナイに一緒に旅をしてもらうよう頼みます。

 

最初は断固断る姿勢だったキナイですが、サーモン・ランの近くに「光が大地に触れる山」があると聞き、嫌々ながらもコーダの申し入れを受け入れることに。

こうして、コーダがあっさりキナイがかかった罠を解き、二人は旅を始めるのでした。

 

このコーダという子グマ、かなり”良い”性格をしており、言わば”おしゃべりモンスター”なんですね。

「ねえ、知ってる?」「この話も聞きたい?」「ねえねえ実はね…」

…とまあ、マシンガンのようにキナイに話しかけてくるんです。これはキナイもたまったもんじゃありませんね。笑

 

昔幼い弟がこんなふうに、(大人にとっては対して面白くない)話をガンガン、延々と語ってきたときのことを思い出します。。

それ故に、キナイがコーダの話を嫌々聞いたり、適当に受け流したりしている姿にめちゃめちゃ共感できてしまうんですよね…。笑

 

さて、このキナイとコーダの旅の中で用いられる楽曲が”On My Way”。この曲も大好きですね~!

コーダの明るい正確が存分に溢れた、希望に満ちた一曲。

いつも旅行に出るときはお供にしている一曲でもあります☺️

 

僕は旅をしてる
希望にあふれ
見上げれば青い空
今を楽しもう

 

 

ゆー

曲の序盤では嫌々ながらもコーダと一緒に歩いていたキナイが、徐々に心を開いていく様子も美しい一曲です☺️

 

動物たちやハラハラドキドキの冒険との出会い

キナイとコーダの旅の途中では、様々な動物との出会いがありました。

 

冒頭キナイが出会ったヘラジカの兄弟が道連れに加わったり。

マンモスに乗って移動してみたり。

道に迷ったときに、山彦に怒鳴りまくるヒツジに出会ったり。

そういったコミカルな動物たちとのやり取りが、物語に良い感じの花を添えてくれるんですよね。

 

一方で、キナイの敵を討とうと追ってくるデナヒとの逃亡劇も繰り広げます。

全力で、本気で命を狙って追いかけてくるデナヒから、命からがら逃げるキナイとコーダ。

そのデナヒの必死さは、二人の兄弟への思いでもあるわけなので、心を打たれます…。

 

さて、そんな旅の道中。キナイはコーダに心を開くとともに、徐々に自らが生きていた世界と、クマとして見る世界の違いに気がついていきます。

特に顕著だったのが、人とクマとの関係。

 

人間は、クマのことをモンスターだと思っていた。気まぐれで人間を襲い、挙げ句命を奪うこともある害獣だと。

一方で、コーダは人間のことをモンスターだと呼ぶのです。何故かクマを襲ってきて、手に持った槍で命を奪うのだと。

はじめはそんなコーダのことを「そんな馬鹿な」とまともに取り合っていなかったキナイですが、度重なるデナヒとの攻防、そして道中で見つけた壁画に対するコーダの反応を見て、徐々にその違いを理解していくのです。

 

そしてそれは同時に、クマに変えられる前、キナイが犯した自らの過ちを理解していくことにもつながるのでした。

 

ゆー

キナイとコーダが揃ってクマと人間の壁画を見上げるシーンは、印象的でしたね…。

 

③サーモン・ランへの到着とフィナーレ

目的地:サーモン・ランに到着

ついにキナイとコーダはサーモン・ランに到着。

そこは、まさにコーダが言う通りサケが大量に川を泳ぎ、クマの仲間たちが皆集まって愉快に暮らす素晴らしい場所でした。

 

ここで用いられる楽曲が”Welcome”

サーモン・ランにやってきたコーダとキナイを歓迎する一曲ですが、この曲も明るく爽快で、とても良いんですよね…。

特に、途中キナイの心情をピックアップして歌うような箇所があります。

 

This has to be the most beautiful, the most peaceful place I′ve ever been to
It's nothing like I′ve ever seen before
When I think how far I've come, I can't believe it, and yet, I see it
And then, I see family, I see the way we used to be

※日本語和訳
ここはきっと、これまで訪れた中で一番美しく、
一番穏やかな場所だ
こんな景色、今まで見たことがない
ここまで来た道のりを思うと、信じられない気持ちになる
でも、今こうして見ている
そして――家族の姿が浮かぶ、あの頃の私たちの姿が

 

 

ゆー

どれほどキナイがこの場所で心をはずませ、心を休ませているか、が伝わる歌詞。
同時に、このときの明るい気持ちがあるからこそ、のちの展開に繋がっていくのがうまいです。

 

衝撃の事実

サーモン・ランの夜。クマたちの間ではサケを投げ合い、受け取った者がこの一年で起きた出来事を語る…というゲームを行っていました。

 

仲間のクマたちが色々と語る中、最後にサケを受け取ったのは、コーダ。

意気揚々と、皆の前で自身の体験した物語を語っていくのです。

 

生まれて5番目か、6番目に寒い日だった
ママと魚を食べていたら、急に茂みに押し込まれ”静かに”って言われた
ママのまねをしてにおいをかいだら…
何かが森からやってくる
どんどん近づいて、ついに姿を表したのは、ハンターだった

ママに逃げ場はない
モンスターはママを氷河に追い詰めた

 

コーダの話をはじめは悠々と聞いていたものの、次第に顔色を変え、過去の映像がフラッシュバックしてくるキナイ。

そう、あの日キナイが息の根を止めたクマは、コーダの母親だったのです。

 

自らの犯した過ち、罪をはじめて、本当の意味で理解したキナイは、居ても立ってもいられず、血相を変えてその場を後にするのでした。

 

ゆー

衝撃的な事実がここで明らかに。
この時点ではコーダは「ママはきっと元気で、サーモン・ランを目指している」と、その後のキナイが犯したことを知らないのも辛いんです。

 

キナイの過ち

姿を消したキナイを心配して呼びに来たコーダ。

そんなコーダの姿を見て、キナイは何があったのかを全て語ることを決意し、ぽつぽつと話し始めるのでした。

 

しんしんと雪が降り注ぐ中、”No Way Out”の曲が流れ、キナイの告白が続きます。

 

このときキナイが何を語ったかは、映画を見ているこちらには分かりません。

そこに流れるのは”No Way Out”の曲、そして、全てを理解し血相を変えるコーダの表情のみ。

全てを聞き終えた後、コーダはキナイの元を去っていきます。

 

自分が最も慕う相手が、実は自分が最も愛する相手の命を奪ったのだと知ったら。

なんとシビアで残酷な展開でしょうか……。

 

コーダは、愛する母と二度と会うことができないことばかりか、その後出会った大好きなキナイすら同時に失うことになるわけです。

キナイにしてみても、当時は何も知らなかったとはいえ、知らなかったでは済まされないどうしようもない過ちを犯しているわけで…。

 

”No Way Out”の歌詞にはこんなフレーズがあります。

 

僕のしたことはもう取り返しのつかないものだけど
できるだけのことは何でもしよう
でも何をすればいいのだろう
~中略~
希望も未来もないどこにも
罪は消えない
でも道は他にない
明日は見えない

 

その歌詞は、まさにキナイの思いそのもの。

本当に、この、やるせなさ、辛さ…。

涙なしには見ることのできない辛いシーンです。

 

ゆー

過去に起こした罪は消えない。それでもコーダのために何でもしたい。でも何をすればいいの…、と言うキナイ。
本当にどうすればいいのこれ……、とこちらも涙に暮れることしかできません。。

 

 

兄弟の絆

キナイの話を聞き、落ち込むコーダの元に現れたのは、一時期旅をともにしたヘラジカの兄弟でした。

 

どうやらこの兄弟、兄の起こした事故により弟の角が欠けてしまったようです。

このことで激怒する弟。過ちを認め、謝り、なだめる兄。

最終的には弟も、兄の愛に気が付き、仲直りをしてコーダの元を立ち去っていくのでした。

 

そんな兄弟の姿を見ていたコーダは決意を固めます。

 

一方キナイ。打ちひしがれ、シトゥカの導きを求めて雪山を彷徨いますが、そこにデナヒが現れ、キナイはピンチに陥ります。

そこに駆けつけたのが、コーダでした。

コーダは、キナイを助けるため、そしてキナイを許すため、後を追い、ピンチを救います。

 

キナイ、コーダ、デナヒがもつれ合う中、グレイト・スピリットが降り注ぐ。

そしてキナイを、元の人間の姿に戻すのでした。

 

久方ぶりに人間に戻ったキナイは、スピリットの一部であるシトゥカ、そしてデナヒと抱き合います。

そして、コーダに優しく声をかけるのです。

 

怖がらないで、僕だよ。キナイだ。

 

最初は恐るべき”ハンター”の姿であるキナイを警戒するコーダでしたが、その目を見て、ずっと自らの兄として旅をともにしたキナイであることに気が付き、一人と一頭は抱き合います。

 

そんなコーダの様子を見たキナイは、心を決めます

コーダのことを放っておけない、と。

人間には戻らず、クマの姿のまま、生きていく、と。

 

こうして再びクマの姿に戻ったキナイ。

先祖の壁に、クマとして手形を残し、コーダとともに仲良く暮らしていくのでした。

 

ゆー

数々の冒険を経て、クマとして生きることを決意したキナイ。
クマに変えられ、世界を違う視点で見ることにより、一人前になった。後にシャーマンとなった兄・デナヒにそう語られて、物語は幕を下ろすのでした。

 

感想と考察

氷河期、という今とは遠く離れた時代の物語でありながら、非常にディズニーらしい傑作です。

物語のわかりやすさ、テンポ、各シーンの美しさに楽曲の良さ、キャラクターの魅力も相まって、最高の作品だと個人的には思っています。

どうしてこの作品がこうも無名な扱いを受けているのでしょうね…。

 

美しい映像と音楽で描かれる、非常にシビアな物語

『ブラザー・ベア』は全編、とても美しい氷河期ならではの自然を描く映像と、要所要所で挟まれる爽快な楽曲で彩られたとにかく美しい作品ですが、その実描かれるのはとんでもなくシビアな物語です。

 

大切な存在の、愛する存在の命を奪う、というキナイが犯したどうしようもない過ち。

そのやるせなさ、どうしようもなさ、取り返しのつかなさに、見ているこちらも打ちひしがれる他ありません…。

 

このキナイの過ちが判明するまでの描き方も非常に上手いんですよね。

 

人間だった頃のキナイの、人間ゆえの傲慢さから始まり。

クマに変えられ、徐々に人間=ハンターがクマにとって”モンスター”であることを理解し。

同時に、コーダに対して紛れもない親愛の情が生まれることを自覚し。

サーモン・ランで幸せなひとときを過ごし。

 

こうして、人間とクマの見える世界が違うこと、クマにもクマの世界があり、その中で自身の居場所を見つけたと心から思った矢先に、全ての過ちが、罪が判明するわけなんです。

 

ここまでのキナイの心情とその変化を非常に丁寧に描いているので、”No Way Out”でキナイがコーダに語りかけるシーンでは、見ているこちらも非常にすんなりと感情移入ができてしまうんです。

 

そして、ここまでどうしようもない状況からの解決として、コーダの行動が本当に素晴らしくって…。

こちらも、コーダというクマがいかにおしゃべりで、でも純粋で、無垢で、キナイのことを想っているかを丁寧に丁寧に描かれているので、最後の行動も非常に共感できるんですよね…。

コーダがキナイと出会えて良かった。キナイがコーダと出会えて良かった。

 

ディズニー映画にしては非常にシビアな問題をとことん突き詰めて描き、ラストも”超ハッピーエンド!”というわけでもなく、過去を受け入れてそれでも前に進む姿を描く。

つくづく素晴らしい物語だな…と思います。

 

ゆー

ある意味、綺麗な”ハッピーエンド”ではないところから、どんな絶望の中からも希望は見出すことができる、という力強いメッセージになっているのだと思います。

 

Tips

”大切な存在の、愛する存在の命を奪う”という状況は、ディズニー作品では他にも、『スター・ウォーズ レジスタンス』の第9話『プラットフォーム・クラシック』で描かれています。

 

『レジスタンス』ではあくまでアニメシリーズの1話として描かれていましたが、”弟が起こした事故により兄の家族の命を奪う”というこちらもかなりシビアな状況。

ぜひ本作と合わせて見てみると、良いなと思います。

 

自然や兄弟の二面性

『ブラザー・ベア』では、自然や兄弟というものの二面性も強く描かれているように思います。

 

物語の冒頭、”Great Spirits”という一曲ではこんなフレーズがあります。

 

この大地がみずみずしく豊かだった頃
人間は自然の中 平和に生きていた
厳しく美しい世界

 

確かに映像では、美しい自然を描き、その自然の恵みを受けて生きる人間の姿がこれまた美しく描かれているんですが、その次の歌詞にある通り、自然はただ美しいだけじゃないんですよね。

そのことを象徴するかのように、この曲を奏でてほんの数刻後に、長兄・シトゥカが氷河に飲まれて命を落とすわけです。

なんという皮肉というか、なんというか…。

 

でも、自然というものにはそういった二面性があり、だからこそその恵みは素晴らしいものなんだと伝えてくれているのだと思います。

 

兄弟、ということについても、作中ではただその素晴らしさを謳うだけではありません。

むしろ、作中で登場する兄弟は常に激しく喧嘩しています。

 

物語の冒頭では次兄のデナヒとキナイがお互いに罵り合うような喧嘩をしていますし、ヘラジカの兄弟も常に何等か言い合いをし、最終的には兄が弟の角を欠けさせる事故を起こしたりしています。

途中ちらっと登場するヒツジの兄弟もあまり仲が良いとは言えませんし、キナイとコーダもこれでもか!というほど喧嘩をします。

 

でも、だからこそ共感できるんですよね。

どんなに喧嘩しても、罵り合っても、心の深いところではずっと繋がっている、というような。

そんなことくらいでは途切れることのない絆がある、というような。

そういった存在が、”兄弟”なんだと。

 

単に自然や兄弟の素晴らしさを描くだけでは、ここまで共感できる作品にはなっていないだろうなと思います。

それぞれ、二面性があるからこそ、こうしてスッと心に受け入れやすいのだと思います。

 

画面枠の演出

実は『ブラザー・ベア』では、作品の途中で画面枠が変わる、という演出が用いられているんです。

 

物語の冒頭、キナイが人間の姿で過ごし、長兄シトゥカを失い、怒りに任せてクマの命を奪うまでのシーンまでは、実は画面の上下に黒い線が入っており、通常より小さいサイズの画面で物語が進みます。

 

その後、キナイがクマとして目を覚ました瞬間から、上下の線が取り払われ、より大きな画面で物語が進むようになっています。

 

これは、キナイが人間からクマに姿を変えることにより、見える世界が物理的に変わったことを示す演出

劇場公開当時は、序盤は全体的に小さい画面で、クマとして目を覚ましたところからは一回り大きな画面になる…という変化がつけられていたんだそうです。

 

上手いなあ…。

 

”トーテム”とは何なのか

最後に、キナイをはじめ部族の人々が成人になると授けられる”トーテム”について。

結局あれは何だったのでしょうか。

 

作中では、「人生を導いてくれるもの」と説明されますが、

あれは個人的には各人が足りていないもの、各人が”必要”なものを示すアイテムなのだと考えています。

 

長兄のシトゥカが持つ”導きの鷲”は、弟たちを導くことが必要だった、という意味。

事実、シトゥカは死後スピリットとなっても、弟たちを正しい道へと導いてくれています。

 

次兄のデナヒが持つ”知恵の狼”は、自らの持つ知恵を伝えることが必要だ、という意味。

作中では、キナイがクマとして生きていくことを決めた後、デナヒはシャーマンとなり、キナイの物語を人々に語り続けています。まさにトーテムに従っている。

 

キナイは、”愛”に気がつくこと。その”愛”を大切にすること。それが必要なことだったのでしょう。

 

どことなく、のちのディズニー長編アニメーション映画『プリンセスと魔法のキス』に登場するママ・オーディンが歌う曲”Dig A Little Deeper”の歌詞と通じる物があるように思います。

 

みんな分かってるよ欲しいものは
でも分かってない必要なもの

も一度考えて 自分のこと
も一度考えて 難しくはない
本当の自分に気がついたら 青空が見える

 

 

欲しいものは分かっているけれど、”必要なもの”は意外と分かっていない。

だからこそ、キナイたちの部族ではそれをグレイト・スピリットに導きとして求めていたのかもしれません。

 

Tips

余談ですが、作中ではもう一箇所ほかのディズニー長編アニメーション映画に通じる物があるシーンがあります。
それは、最後にコーダが人間に戻ったキナイの目を見て、キナイであることを理解するシーン。

 

まるで、1992年公開の『美女と野獣』のラストと同じような物を感じませんか?

『美女と野獣』でも、ベルが人間に戻った野獣の目を見て、野獣であることを理解するシーンがありますが、あちらとまるきり同じような展開ですね。

 

『ブラザー・ベア』の公開は『美女と野獣』よりも後なので、明らかに意識して制作されているのかもしれません。

 

まとめ

 

今回の記事では、映画『ブラザー・ベア』について、ネタバレ感想をお届けしました。

 

映画についてのまとめ
  • 氷河期の北アメリカを舞台に描かれた、異色のディズニー作品
  • 主人公キナイが熊に変えられることで始まる、兄弟愛と贖罪の物語
  • 音楽は『ターザン』で有名なフィル・コリンズが担当、感動を彩る名曲揃い
  • ディズニー映画の中でも知名度は低いが、ファンからは「隠れた傑作」と評価

 

『ブラザー・ベア』は、美しい自然を舞台に、兄弟愛・贖罪・成長といった深いテーマを描いたディズニーの隠れた名作。

子ども向けの冒険物語に見えて、実は大人こそ心に刺さるメッセージが込められています。

まだ観ていない方は、ぜひ一度この世界に触れてみてください。

 

ブログでは他にもディズニー長編アニメーション作品のネタバレ感想記事を掲載しているため、合わせてチェックしてみてください👀

合わせて読みたい

 

また、ディズニー長編アニメーション作品一覧については以下記事にまとめています。

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