こんにちは、yu-です。
今回の記事では、ディズニー映画より『イントゥ・ザ・ウッズ』のネタバレ感想をお届けします。
2014年公開のディズニー長編実写映画で、本編の物語がほぼ全て歌で贈られるミュージカル。
それ故に、日本語吹き替え版をそもそも制作されなかったという、昨今のディズニー作品としては異例の作品です。
各レビューサイトでは軒並み低評価と、かなりの酷評を受けていますが、じゃあ見る価値は無いのか?というと全くそんなことはない。
ブラックユーモア溢れる手厳しい風刺でありつつも、ラストに一縷の救いを残してくれる、個人的には定期的に見返したい部類の映画です。
そうでなくても、非常にミュージカルらしいミュージカルで、それだけで面白い作品ですね。
Contents
作品情報
公開年 | 2014年 | ||
---|---|---|---|
上映時間 | 124分 | ||
原題 | Into the Woods | ||
スタッフ | 監督:ロブ・マーシャル
製作:ジョン・デルーカ、 ロブ・マーシャル、 マーク・プラット、 カラム・マクドゥガル |
||
おすすめ度 |
|
原作は1987年初演のミュージカル
実は本編がほぼ全て歌で贈られるミュージカル映画『イントゥ・ザ・ウッズ』は、同名の1987年のブロードウェイ・ミュージカルがもととなっています。
それ故に、本作が”非常にミュージカルらしいミュージカル映画”と評されるのは、そりゃ当たり前なわけです。
ストーリーも、使用楽曲もほとんどすべてが同じ。
かつて舞台上で演じられていたミュージカルが、そのまま映像作品となって帰ってきたのです。
あらすじ
パン屋の夫婦は魔女の呪いを解き、子どもを助けるために4つのものを探して森の中へ。
赤ずきんは病気の祖母を見舞うために森の中へ。
シンデレラはお城の舞踏会を夢見て、母の墓に願いをかけるために森の中へ。
ジャックは親友である牛を売るために森の中へ。
おとぎ話の主人公たちが森の中へ行った時、それぞれの物語が、願いが絡み合い、予想もつかない展開が訪れる…。
【ネタバレ感想】ブラックユーモア溢れるおとぎ話が描かれる前半
敢えて小見出しに”前半”と書いたように、この物語は大きく前半と後半に分ける事ができます。
そりゃもう、すっぱりと、綺麗に。
まるで間にミュージカルの幕間を端から見据えていたかのように。
そんな物語の前半の物語は、誰もがよく知る物語の主人公たちが絡み合って織りなす、妙にリアルなおとぎ話です。
それぞれの願いと物語
物語の冒頭、12分間の曲に乗せて、物語の主要登場人物の背景と、彼らが森の中へ行く理由が語られます。
彼らは皆、それぞれの”Wish”を胸に森の中へ行くのですが、この”Wish”というのが非常にミソになるんですよね。
背景:
パン屋の夫の父親の過去の行動により、隣人の魔女に”子どもができなくなる”呪いをかけられた。
呪いを解くために、魔女が提示した4つのキーアイテム①「ミルクのように白い牛」②「赤い頭巾」③「黄色い毛」④「金色の靴」を探しに森の中へ。
背景:
病気の祖母を見舞うために森の中へ。
母からは道草をしないように、と強く忠告されている。
キーアイテム②「赤い頭巾」の持ち主。
背景:
実母が亡くなって以降、継母とその娘たちに使用人としてこき使われている。
王子が開催する舞踏会に行くことを夢見て、母の墓に願いをかけるために森の中へ。
キーアイテム④「金の靴」の持ち主。
背景:
非常に貧しい実家に住む。所有する牛がミルクを出さなくなったため、隣町に牛を売りに行くため森の中へ。
何を隠そう、この牛こそキーアイテム①「ミルクのように白い牛」ミルキー・ホワイトである。
そう、冒頭の時点でパン屋夫妻が求める4つのアイテムの内3つの所在が明らかとなり、ああこれからこの各登場人物たちが関わっていくのだな…!ということが明らかになります。
曲としては長いのですが、冒頭のほんの12分でこれらの各登場人物たちの背景と目的がきっちり描かれるのです。
基本的にはおとぎ話の物語をなぞっていくが…
さてそんな冒頭から入っていくこの作品、その後前半パートでは、基本的にはそれぞれの有名なおとぎ話の物語のとおりに進行します。
赤ずきんは狼と出会い誑かされて食べられ、救出される。
ジャックは魔法の豆を手にして巨人の国に行き、一転お金持ちとなる。
そしてシンデレラは王宮に残した靴の片足を頼りに彼女を探す王子に見つけられ、晴れて結ばれる。
…という大枠は変わらんのですが、随所随所に思わずはっとさせられたり、ふふっと笑わせられる、妙にリアル、非常に人間らしい側面が潜んでいるんですよね。
例えば、救出された赤ずきんが救出した猟師=ここではパン屋の夫に対して歌う一曲では、こんなフレーズが。
大切なことをたくさん学んだ。
知らなかったことばかり。
頼っちゃダメ、ずきんやマントに。
危険から守ってくれない。
~中略~
怖さは刺激的、優しさには裏がある。
いやわかる、わかるんですけども、なんでしょうこの違和感。
狼に食われて九死に一生を得た直後であるというのに、淡々とした口調で「私はこんなことを学んだ!」というのです。
まるで、会社の研修に参加した後の”振り返りレポート”のような口ぶりじゃあありませんか。笑
物語は確かに赤ずきんなんですけども、そこには明らかに私達がイメージする”赤ずきん”らしからぬ姿があるんです。
こういった妙にリアルな部分が、見ていて面白くて仕方ない。
一事が万事、”妙にリアル”な雰囲気を保ちつつ、それぞれのおとぎ話はひとまずのハッピーエンドに着地していきます。
【ネタバレ感想】めでたしめでたしのその先へ
さて、ひとまずのハッピーエンドを迎えた前半ラストでシンデレラの結婚式に集まった主要登場人物たちでしたが、その瞬間国中を大地震が襲います。
その正体は、ジャックが豆の木を切り倒した際に倒してしまった巨人の妻。
怒り狂った妻は、ジャックを探して地上に降りてきたのでした。
ハッピーエンドも束の間の、いきなりの壮絶すぎる展開に唖然とする登場人物たち。
当然見ているこちらの唖然です。いやいやそんな展開になると誰が思うでしょうか…。
うーーん、これもなんだか風刺のような気がしてなりませんね…
悲劇的な展開の数々
そして物語は、どんどん悲劇的な展開へ。
巨人の来訪をきっかけに、ざっくり以下のような事件がおきます。
fa-checkポイント
- 大地震により赤ずきんの祖母・母親が行方不明(恐らく落命)
- ジャックの母親がジャックを庇うため巨人に挑み、驚いた王の従者の下敷きとなって命を落とす
- パン屋の妻とシンデレラの王子が出会い、キスをする
- パン屋の妻が巨人の作り出す自身により崖から転落、命を落とす
まさかの、主要登場人物含めもう続々と命を落としていく衝撃展開に。
特にパン屋の妻に降り掛かった運命には驚きを隠せません。
生きる人は生きる、ダメな人は姿を消す。
なんともまあ、非常に童話らしい展開ですねこれは…。
壮絶な罵り合い
さて、そんな悲劇的な展開に飲み込まれ、それをはっきりと認識した主要登場人物たち。
パン屋の夫、シンデレラ、赤ずきん、ジャックの四人は、あろうことか壮絶な罵り合いを始めるのです。
ジャックが巨人の命を奪ったからこんな事になったんだ。
牛と魔法の豆を交換しパン屋が悪い!
魔法の豆を奪った父親がいなければこんなことにはならなかった。
魔法の豆を投げ捨てたシンデレラが悪い。
金のハープを見たがった赤ずきんが悪い。
そもそも魔法の豆なんぞを栽培した魔女が全て悪い!!
個人的には映画の中でこのシーンが一番好きです。笑
そのすべての主張は、それぞれ全く間違っていない。
でも、見ているこちらには、そのすべてが間違っていることがわかる、この壮絶なシーン。
間違っている、こんなことは間違っているけれど、それを窘める言葉を私は持っていませんでした。
だってこんなセリフ、実際に口に出さないまでも、心のなかでは常に考えていることだから。
いつだって悪いのは、自分以外の誰かなんです。
そんな自分自身の心の内も突きつけられるようなシーンで、見ていてもう心がざわついて仕方がなかったですね…
皆が自分以外の誰かを指差して、責任をなすりつけ合う様は、めちゃめちゃ印象に残って仕方ないです。
力強いメッセージが手渡される
そんな罵り合いを経て、それぞれの悲しみを、苦しみを抱えつつ4人は協力しついには巨人を倒すことに成功。
そして行き場を無くした4人は寄り添い、物語はラストを迎えるのですが、この罵り合いのシーン以降、登場人物たちに、そして見ているこちらに対して強烈なメッセージをいくつも手渡されるのです。
みんなひとりじゃない
曲『No One is Alone』で語られるこのメッセージ。
誰が正しいかはわからない。
もしかすると、魔女が正しくて、巨人が善なのかもしれない。
それを決めるのはあなた自身。
でも忘れないで、誰かがきっとそばにいる。
誰も一人では無いのだ、と。
しばしばこのことを忘れがちですが、きっと私はひとりじゃないんだと、同じ側に立つ人はいるのだと。
そんな一縷の望み、というべき優しい希望を見いださせてくれるメッセージで、このシーンのこの歌にはホッとさせられます。笑
願い事には気をつけて
ラストシーンの曲『Children Will Listen』で語られるワンフレーズです。
この曲は「子どもたちは聴いている」というのが主テーマで、こちらのメッセージもメッセージとしては強力なのですが、それに続くこのフレーズが、とてつもなく印象に残っています。
願い事には気をつけて。
願いは心が生む。
たどる道を大切に。
願いはいつか現実に。
「願いはいつか叶う」
というのは、ディズニーお得意のセリフではありますが、こんな形で使ってきたのはこの作品が最初で最後では無いでしょうか。
願い、というのは非常に危険なものなのです。
事実、この物語では、登場人物たちの願い、”Wish”はすべて叶えられているのです。
パン屋夫妻は子どもを授かり。
赤ずきんは祖母の見舞いを完了させ。
シンデレラは舞踏会を訪れて王子と結ばれ。
ジャックは牛と別れることなく生活は楽になった。
じゃあ願いがかなった彼らが皆幸せか?というと、そうではないことがもはや明らか。
ここで私達が教訓として得るべきなのは、「願いがかなっても幸せにはなれない!」なんていうことではなく、その願いについて深く考えてみろ、ということでしょう。
時には、その願いを叶えるために、この物語のように、その願い以外のものをすべて捨てることになってしまうのです。
そこまで極端ではないにしても、例えば「SNSで有名になりたい!」と願ったとしたらどうでしょうか?
その願いが現実の物となった時、もしかすると有名になったが故に日常生活をまともに送ることができなくなるのかもしれません。
でもきっと皆にとって必要なメッセージであることは間違いありませんね。
【まとめ】
さて今回の記事では、映画『イントゥ・ザ・ウッズ』のネタバレ感想をお届けしました。
全体的にミュージカルとして非常に楽しく、見応え抜群の作品。
最後に手渡されたメッセージには考えさせられます。
このずーんとした重さがたまらず、定期的に見返してしまうんですよね。笑
本記事の最後に、『Children Will Listen』のラストのフレーズを引用して締めさせていただきたいと思います。
言葉の力に気をつけて。
子どもたちだけでなく。
時には言葉の力が消えぬまま、あなたに返ってくる。
物語には気をつけて、魔法の力が潜むから。
子どもたちは聴いている。
Twitterでは主に映画についてタイムリーにつぶやいています。
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