映画『イン・ザ・ハイツ』のネタバレあらすじと感想!心に突き刺さるミュージカルに出会えた喜びを語ります

こんにちは、yu-です!

 

諸々の社会情勢の影響により、次々に最新映画が公開され、見たい映画がありすぎて時間が足りない!!…という嬉しい悲鳴を上げ続けている今日このごろですが、いかがお過ごしでしょうか。

 

さてそんな数ある”見たい映画”たちの中で厳選して見に行った映画が、『イン・ザ・ハイツ』

2021年7月30日公開の作品で、ブロードウェイ・ミュージカルを映画化した作品です。

 

 

日本ではそこまで予告編がバンバン打たれたわけでもなく、さほど注目されていなかったように見えていたこの映画。

そんな中、私は『グレイテスト・ショーマン』の悲劇を味わっているので、ミュージカルと言う時点でこれを見逃してはならぬ…!!と熱く強い気持ちを持って、この度見に行くことにしたわけです。

 

ちなみに『グレイテスト・ショーマン』の悲劇とは、軽い気持ちで劇場公開を見逃して、後にディズニー・プラスで視聴したときに、「なんていい映画なんだ…!!」+「なんであのとき劇場公開を逃してしまったんだ…」という二種類の号泣をするはめになったあの事件を指します。

きっと誰もが一度は経験したことがあるのでは無いでしょうか…?

 

さて、話を戻して、そんなわけで見にいた『イン・ザ・ハイツ』ですが、文句なしの大傑作。

特に劇中歌が気に入りすぎて、映画鑑賞直後にサントラを購入、以来聞き続けるという日々を送っています。

 

というわけで、今回の記事ではそんな『イン・ザ・ハイツ』のネタバレ感想をお届けします。

 

文句無しで最高の作品でした!!

 

作品情報

公開年 2021年7月30日(日本)
上映時間 143分
原題 In the Heights
スタッフ 監督:ジョン・M・チュウ

製作:リン=マニュエル・ミランダ /キアラ・アレグリア・ヒューディーズ/ スコット・サンダース/ アンソニー・ブレグマン/ マーラ・ジェイコブス

 

あらすじ

わりゆくニューヨークの片隅に取り残された街ワシントンハイツ。祖国を遠く離れた人々が多く暮らすこの街は、いつも歌とダンスであふれている。そこで育ったウスナビ、ヴァネッサ、ニーナ、ベニーの4人の若者たちは、それぞれ厳しい現実に直面しながらも夢を追っていた。真夏に起きた大停電の夜、彼ら4人の運命は大きく動き出す。

 

【ネタバレ感想】

 

全体的に明るくラテンの曲調に乗せられた、爽快感を伴った作品。

その一方で、描いているテーマはアメリカの貧富の差や移民問題など、とにかく重いテーマ。

 

このあたりのギャップが、いかにも登場人物たちの生き方を示しているようで、考えさせられるけれど辛くはない。あとに残る物語だけど、重く苦しいものではなく、どこか熱い風を感じる

そんな雰囲気のある作品でしたね。

 

…とまあ全体をまとめようとするとこんな感じで恐ろしく抽象的になってしまいました。。笑

というわけでこの先は物語の流れに沿って、独断と偏見で作品について語っていきたいと思います。

 

 

①ワシントンハイツと人々

物語の冒頭に語られるのは、ニューヨークに片隅にある移民たちが多く住む街・ワシントンハイツの姿。

街の住人の殆どが移民であることから、平たく言ってしまえば貧しく、それでいて人やお店の入れ替わりが激しい、言ってしまえば不安定な街。

 

そこに住み生活を営む人々の姿とともに、そんな街の姿がありありと浮かび上がってくるのが物語の序盤の大まかな流れ。

主人公のウスナビが、明るい南国のビーチで自らの過去を子どもたちに語って聞かせる形で物語は展開します。

 

結構多くの登場人物が次々登場してくるので、これは混乱するかもしれん…!と身構えていたのですが、その心配は無用。

冒頭に紹介された後に、今度はそれぞれの詳しい背景や状況が語られるので、自然と頭に入ります。

このあたり工夫されているんだろうな…。

 

以前『レ・ミゼラブル』を見た際に大混乱に陥った身としては、この工夫はありがたい限りです。

 

冒頭の一曲「In the Heights」は名シーン

もうすでに数々の批評サイトで述べられていることですが、やはり冒頭の「In the Heights」は圧巻だった。

 

 

軽快なリズムで始まり、街の様子から登場人物を一通り紹介した後、予告編等でも推されていた群舞へ。

 

これだけの人数の人が集まって、皆で歌って踊っている姿をみると、それだけで心の中からぐおおっと何かが上がってくるんですよね。笑

ああ、これがミュージカルだぞ…!と。

 

この、ぐおお、という感覚はミュージカルならでは!!
そう、この感覚が味わいたくてミュージカルを好むんですよ私は…!

 

各登場人物の立場と背景が語られていく

その後は代わる代わる、各登場人物について語られていきます。

メインどころは4人。

 

主人公、ウスナビ。

故郷ドミニカに帰ることを夢見て、甥っ子のソニーとともに両親が残したコンビニを切り盛りしている。

 

ベニー。

ウスナビの友人で、タクシー会社に務める会社員。幼馴染のニーナを思ういいヤツ。

 

ニーナ。

ウスナビ、ベニーとは幼馴染で、ワシントンハイツで唯一大学進学を果たす優等生ながらも、この度大学を退学してワシントンハイツに帰宅する。

 

バネッサ。

デザイナーを夢見る、ウスナビが思いを寄せる女性で、ヘアサロンで働いている。

 

それぞれの思い、関係性までも語られていくわけですが、この四人に限らず皆に共通することは、「誰もが夢を追っている」ということ。

誰もが夢を持ってアメリカの地にやってきている。

誰もが夢を持って、朝から晩まで働いている。

そういったワシントンハイツの状況というものを作品の序盤では見せてくれます。

 

そしてこの段階から、”停電”がひたひたと忍び寄る。

この先は、”停電”に向かって物語は展開していくわけです。

 

時期は真夏、最高気温は31°。もしこの状況で停電したら、それは単なる停電ではすまないだろう…というのを感じさせてくれます。

 

②停電までの日々

停電が迫っているとはいえ、それを知っているのは当然こちら側、観客のみ。

彼らの生活は続きます。

 

960,000ドル

そんな中語られるエピソードは、ウスナビが販売している宝くじに当たりくじが出た、というもの。

ウスナビから宝くじを買った誰かが、960,000ドル当選した、というのです。

 

これを知った近隣の住人は大騒ぎ。

もし960,000ドルあったら…?という夢想に思いを馳せていく一曲、「960,000」に突入していきます。

 

 

このシーンも楽しかった!

映像をうまいこと使ってそれぞれの夢を表現するシーンから、後半のプールでの派手なシーンまで、一連の流れが綺麗すぎる。

そしてここで、本心から欲しい物を述べる人もいれば、本心を隠して口にする人までいて、単に明るい曲調ながらも「おや」と気付かされる部分が多いこともポイント。

 

そうだよね、ソニーはこういう場だと言わないんだよね…。

 

私が日常的に口にする「宝くじ当たんないかな~?」とは全く重みが違うことを感じさせられました…

 

パーティとクラブの夜に運命は揺れる

停電当日、ニーナの実家で皆を招いてのパーティが開催されますが、その場でニーナは初めて父に退学の事実を告げることに。

そしてそれがきっかけでニーナと父は激突。パーティはお開きになり、若者は街へ、クラブへと繰り出すことになるのです。

 

 

この時のニーナの心情を思うと色々と思うところがあるんですが、その直後のクラブでのニーナの姿が美しい。

ある意味秘密を打ち明けてスッキリした側面もあるのかもなあ、と思っていました。

 

さてクラブのシーンでのメインは、バネッサとウスナビ。

勇気を出して(半ばソニーに乗せられて)バネッサを誘ったウスナビでしたが、クラブの場では緊張しきり、更には他のメンズと踊るバネッサに嫉妬し、他の女性を誘って踊る始末。

これ私がバネッサだったら、もう知らない!帰る!レベルですね。というか実際そうなったわけですが。←

 

こうして各々の気持ちが激しく揺れる最中、ワシントンハイツを停電が襲うのでした。

 

訪れた停電と溢れる花火

停電で大混乱する最中、バネッサとウスナビは離れ離れに。

その後ようやく再開できるも、ウスナビのクラブでの態度に腹を立てたバネッサは、全力で彼を拒否する。

 

一方、停電で混乱する街を少しでも明るくしようと、ソニーは街に特大の花火を上げる。

この花火が綺麗で、綺麗で。

映画館中を明るく染める、パッと明るい光があまりに綺麗すぎて、何の意味もなく涙が出そうになりました。←

 

さて、それぞれの気持ちが乱れる中、人々はアブエラのもとに集います。

ああこういうときに支えになる人がいることが、どんなに良いことかと思わずにはいられません。

 

こうして停電の夜は更け行くのでした。

 

ここで流れる曲「Black out」は作中の中でも好きな曲。
人々の思い、混乱が入り交じる中、花火の明るい光がどれほど人を力づけるのか、を一曲の間で表現しているのが素晴らしいです。

 

③別れと転機、クライマックス

もうここから先は、事ある毎に涙が止まらずどうしようもない状態に陥りました。

要所要所で心の柔らかいところをPUSH!してくるセリフや歌詞が続々登場してくるんですよ。どうしてくれようか。

 

生きた証は人々の中に

まず、停電の夜、皆の心の支えであるアブエラが他界します。

 

アブエラの生涯を語る一曲Paciencia Y Feでは、あの優しく笑顔の絶えなかったアブエラが、いかにしてワシントンハイツに訪れ、どれほど苦労したか。

そしてそこで手に入れたものはあったのか?を問うていて、聞いていて苦しく切なくなる一曲です。

でもそんなアブエラも、最後はふっと肩の力を抜くように、この世を去るのでした。

 

アブエラが息を引き取った後、彼女の葬儀に街中の人々が集い、歌い上げるAlabanza」。

 

本人にとっては辛いことの多い人生だったのかもしれない。

それでも、彼女の生きた証は、周りの人々の中に確かにあるのだと、強く実感させてくれる一曲で。アブエラのことを思うと、付き合いが短いはずの一観客なのに、涙が止まらなくなってしまいました。。

 

悲しいのと、でも嬉しいのと、感動とがごっちゃになる、わけのわからん涙でした…

 

圧巻のカーニバル

停電が続き、美容院は移転。ウスナビは街を去ることを決めたある日のワシントンハイツ。

うだるような暑さに、文字通りうだっている住人たちにヘアサロン三人組は呼びかけます。

 

カーニバルだ、と。

 

祖国の旗を掲げよう。

歌え、踊れ、語れ。と。

 

ここで、そんなことをしても無意味じゃないか、街は変わっていく、私達は無力だ、とソニーとバネッサは水を差します。

この二人の意見はごもっともで、街を去っていくヘアサロン三人組や、街を去る能力のあるニーナ、そしてドミニカへの帰国を決めたウスナビを前にして、ワシントンハイツにとどまることしかできない立場なのですから。

 

そんなソニーたちに対してウスナビはこう返します。

敢えて原文のまま乗せときますね。

 

Maybe you're right, Sonny.
Call in the coroners
Maybe we're powerless
A corner full of foreigners
Maybe this neighborhood's changing forever
Maybe tonight is our last night together
However!
How do you wanna face it?
Do you wanna waste it
When the end is so close you can taste it?
Y'all go cry with your head in the sand
I'm a fly this flag that I got in my hand!

 

ざっくり訳すと、この通り。

「私達は無力かもしれない。この街で皆で集まれるのも、今夜が最後かもしれない。でも、この一瞬を無駄にしたいのか?この一瞬は確かにあるのだから、旗を振る!」

 

 

この歌詞の部分が個人的にはものすごくぶっ刺さりまして。

そりゃ全てが順風満帆な訳が、あるわけないんですよね。

 

うまくいく人もいれば、行かない人もいる。

でも今この一瞬を無駄にするかは勝手に決めていいんだと。

踊れるときに、歌えるときに歌えばいいんだと。

こういうどこまでも雑な励まし方、雑だから故にストレートに刺さってくるので私は大好きです。

 

泣きました。←

 

幸せは常に手の中に

いよいよウスナビがドミニカに向けて旅立つ朝、ソニーとバネッサは最後にウスナビを店へといざないます。

 

そこにあったのは、養生布でバネッサがデザインした洋服に、壁一面に描かれた祖国の風景。

 

そこでウスナビはようやく気がつくのです。

自らの祖国は、ドミニカだけど、ワシントンハイツだったということに。

追い求めていた「人生で最高の日々」は、まさにこのワシントンハイツで過ごした日々だった、ということに。

 

祖国とは、故郷とは、場所ではなくその空間そのもの。

そこにいる人たちもすべてひっくるめて、全て集めたその場所が、帰るべき場所なんだ、と。

 

そう、最初からウスナビが子どもたちに話を聞かせていたあの場所は、ドミニカ共和国のビーチではなく、ウスナビの故郷だった、というわけ。

 

この結末にはものすごく納得で、嬉しくて。

同時に、ああこれはきっと今だから理解できるんだろうな…、と思ってちょっとむず痒い気持ちになったりしました。

 

 

おそらくはこの一連の話、子どもたちには理解できていないことでしょう。

現に、話が終わったと知るや、皆一目散に外にかけていくわけですから。

 

でも、それでいい。いつか分かるときが来るはずだから。

 

自分自身そういう体験をしたことがある故、是非これは子どもたちにも知っておいてほしい物語だなと思いました。

 

幸せのは常に直ぐ側に。使い回された言い回しですが、やはり良い響きですよね。

 

まとめ

 

というわけで、なんだかとりとめもなくつらつらと語ってきましたが、要は言いたいことは『In the height』は良いぞ!ということです。

 

もちろん人によって合う、合わないはあると思います。

特にミュージカル耐性が無い方には相当しんどいでしょう。作中殆どが歌で進行するので。

 

更には、作品から受け取るものも人それぞれでしょう。

この記事を読んで、「いやいやもっと他に移民のこととか言うことあるだろ!!」と思った方、それもごもっともです。

ただ、私が受け取ったのはこの記事に書いた部分だよ、とただそれだけのこと。

むしろどう感じたのか、とかは是非お話したい部分です。

 

最後に、この作品を劇場で見れてよかった。

この2時間のおかげで、ここ2週間くらいの生活がより明るくなりました。

 

では今回の記事はこのあたりで失礼しましょう。

 

より多くの人にこの映画が届きますように!

 

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