こんにちは、yu-です。
前回の記事では、『イカボードとトード氏』の前半部分『トード氏』パートのネタバレ感想をお伝えしました。
今回の記事では、その続き、後半『イカボード』パートについてその結末まで詳しくお伝えしたいと思います!
前半の『トード氏』パートから打って変わって、ホラー味が強く後味の悪い奇妙な終わり方をするイカボードパート。
この映画がトラウマになっている方も少なくないのでは。
一度見たらもう忘れることなどできない、『イカボード』についてまずは作品の情報から語っていきましょう…。
※前回の記事をお読みの方は①は読み飛ばし、②からお読みください。
Contents
作品情報
公開年 | 1949年 | ||
---|---|---|---|
上映時間 | 68分 | ||
原題 | The Adventures of Ichabod and Mr. Toad | ||
スタッフ | 監督: ベン・シャープスティーン(指揮) 製作 :ウォルト・ディズニー、ロイ・O・ディズニー |
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おすすめ度 |
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ディズニー最後のオムニバス作品
『イカボードとトード氏』は1949年にディズニーの長編アニメーション作品第11作品目として公開された映画です。
前半の『トード氏』パートと、後半の『イカボード』パート、それぞれ30分程度の中編のアニメ作品を2つ組み合わせたオムニバス形式となっています。
『ラテンアメリカの旅』以降ディズニー・スタジオはオムニバス形式の短編集を”長編映画”として公開し続けていたのですが、そんなオムニバス形式の作品の最後を飾るのが、この『イカボードとトード氏』です。
物語はナレーターによって進行する形式。
冒頭はこんなセリフが語られます。
英文学で一番‟すごい”キャラクターとして、私はシャーロック・ホームズでもオリバー・ツイストでもなくトード氏を推薦します
そして絵本が開かれ、トード氏の物語が始まる。
基本的にはナレーターがまるで私達に読み聞かせをするような雰囲気で物語が進行していきます。
ほぼ完全に2つの別々の物語が繋がっている作品、と見ていいでしょう。
一部マニアの間では有名な作品
さて『イカボードとトード氏』はディズニー作品の中ではマイナーな部類に属し、きっと街頭インタビューをしたら100人に1人知っていれば良い方、というレベルかと思います。
が、ディズニー映画ファンとなると話は別。
『イカボードとトード氏』はいくつかの理由でファンの中では少々有名な作品なのです。
fa-check理由
<トード氏>
- カルフォルニア州アナハイムに”トード氏”パートをテーマにしたアトラクション『トード氏のワイルドライド』がある
<イカボード>
- ディズニーでは珍しいホラーアニメ
- ディズニーでは珍しいバッドエンド
これらの詳しいことについてはそれぞれの記事の中で紹介します。
日本では視聴困難な作品だった
『イカボードとトード氏』はディズニーのかなり初期の作品ですが、日本ではVHS、ディズニー正規DVD、パブリックドメイン型のDVDなどの映像媒体が一切販売されていません。
厳密に言うと”イカボード”パートのみ切り出されて、DVD『とっておきの物語 ミッキーの王子と少年』の中に収録されていますが、”トード氏”と”イカボード”が2つ合わさったいわば完全版を見るためには、有料のディズニー・チャンネルで放送されるときを待つか、渡米するか、個人輸入するかの3択しかありませんでした。
ところが、2019年そんな状況に激震が。
日本でサービスがスタートした”ディズニー・デラックス”というサービスにて配信されることとなったのです。
その後サービスは”ディズニープラス”へと姿を変えたものの、配信は継続。
現在はディズニープラスで、いつでも好きなときにボタン一つで視聴することが可能となりました。
※なお2021年4月現在、本作は音声は英語・日本語両方用意されていますが、字幕は英語のみです。
【ネタバレ】イカボード先生と首なし騎士
ここからは、そんな映画『イカボードとトード氏』の後半部分、『イカボード先生と首なし騎士』についてネタバレ込みで語っていきます。
あらすじ
スリーピー・ホロウにやってきたのは、ひょろっと長く細い体を持つ、イカボード。
彼は相当に変わった男であったが、ある日村一番の美女で地主の娘であるカトリーナの美貌とその資産に恋をする。
ところが彼女を狙っているのはイカボードだけじゃない。
村の若者のブロムも、彼女の心を狙っていたのだ。
かくしてイカボードとブロムの争いが始まるが、そんな中ブロムがイカボードにスリーピー・ホロウに伝わるある奇妙な伝説を語るのであった…。
原作について
本作の原作は、ワシントン・アーヴィングの小説「スリーピー・ホロウの伝説」です。
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そもそも”スリーピー・ホロウ”というのは、アメリカ合衆国北部のニューヨーク近郊で語り継がれている伝説のこと。
開拓時代のアメリカに渡って来て首を斬られてしまったドイツ人騎士が、やがて「首なし騎士」として復活し、ニューヨーク近郊の森の中で馬に乗って犠牲者を待っている…というもの。
アメリカでは、この小説を期に有名になった伝説、とのことです。
さて本作の『イカボード先生と首なし騎士』の物語も、大枠はこの伝説に則っていますが、そのディズニー作品とは思えぬようなホラーシーン、そしてあの結末がファンたちの間で話題となっているのです。
物語のあらすじと感想
ここからは物語の流れに沿って私の感想を語っていきたいと思います。
①イカボード先生がやってきた
スリーピー・ホロウにイカボード先生がやってきた。
イカボードは耳は大きく、足も大きい。
鼻も飛び出てカカシのような格好をしている。
要するに、”変な人”だった、というわけで、彼がやってきたその日は村の人々は皆目を瞠ることになるのでした。
…冒頭、この調子でイカボードについて紹介する歌が挿入されるのですが、仮にもディズニー映画の一作品の主人公であるのに、ここまで外見をけちょんけちょんに言う歌詞も他にはありません。
一方で、イカボードが歩き、町の人達が彼を”変わり者”として歌い上げる…という流れはあのディズニーの有名な作品『美女と野獣』の序盤、『朝の風景』のシーンとよく似ていますね。
さてそんなこんなでスリーピー・ホロウにやってきたイカボードは、優秀な先生。
生徒を愛のムチで育てることが信条…のようですが、そのムチも生徒のお弁当の中身で弱ってしまうという、ほんとにこの先生優秀なのか?と疑わずにはいられないような説明が入ります。
更には、生徒の家に行って母親に取り入って食事をぺろりと平らげるなど、ほんとにこの先生優秀なのか?ともはや疑問でしかありません。
②カトリーナとの出会い
さてめったなことでは動じないイカボードが、村の地主の娘で美人のカトリーナに出会い、一発で恋に落ちます。
この恋に落ちる描写がこれまたわかりやすい。
”トード氏”の車に魅入られる様のような、もはや正気では無くなっている様子が描かれるのですが、カトリーナに見入ってしまって自分の帽子を食べたりとまあ散々です。
挙げ句教師の仕事も、カトリーナのことを考えていて全く手につかない様子。
ほんとにこの先生優秀なのか……?という疑いはこのあたりで確信を深めていきます。
この”恋は盲目”を地で行くようなシーンが見ていて面白くてたまりません。
さてそんなイカボード、カトリーナの容姿に惹かれて惚れたという単純極まりない惚れ方なのかと思いきや、なんと彼女の資産に目をつけてるあたり、非常に”俗っぽい”です。
特にこのセリフ。
イカボードの夢想の中で登場するセリフなのですが、もうこんなの聞いてしまったら、愛する娘はお前になんぞやるもんか!!…と全力で止めたくなるレベルですね。
僕のカトリーナ。
パパの箱入り娘。
どんな宝も墓まで持っていけない。
パパがいなくなったら、僕がそこに座ろう。
さて一方のカトリーナ、彼女も”いい人”であるとは言い切れず。
自らの地位と美貌を完全に理解して男たちを手玉に取るタイプの、まあはっきり行ってしまえば悪い女です。笑
決して英雄や王子とは言うことのできない俗っぽすぎるイカボードと、これまた決してステキなヒロインとは言えないカトリーナ。
その上、あの手この手で、イカボードに対して実力行使も辞さない勢いでカトリーナを狙うブロム。
…登場人物全員癖が強すぎません?笑
これ、ディズニー映画ですよ…?
③首なし騎士の伝説
カトリーナをめぐる争いに、自前の才能とセンスによって尽くブロムを出し抜いて成功するイカボード。
そんな彼にも弱点はありました。
そう、迷信や怪談にめっぽう弱いこと。
このことに気がついたブロムは、スリーピー・ホロウに伝わるとある伝説…『首なし騎士』の伝説について語るのでした。
ついに出ました、『首なし騎士』。
ここで『首なし騎士』についての歌を歌うのですが、この曲がとんでもなく印象に残ります。
イメージは『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』の『This is Halloween』のような雰囲気。
アップテンポで、耳に残るメロディにもかかわらず非常に不気味。
個人的には今作の中で最も好みの楽曲です。この曲だけでも一度聞いてみてほしいくらい。
そして迎える終盤は、ディズニー映画では例を見ないくらいの完全なるホラー。
この作品に出会ったのが子どもの頃じゃなくてよかった…と本気で思うくらい、トラウマもののシーンです。
不安に包まれたイカボードが、夜の森の虫や動物の鳴き声にいちいち反応し過剰に怖がる。
このときの表情が本当に恐ろしげで、その気持が徐々に見ているこちらに伝播してくるんですよね…。
そして最終的に彼は出会ってしまうのです。
誰と?首なし騎士と。
逃げても逃げても追いかけてきて、ようやく”出口”に向かったと思いきや動転した馬によって全く逆方向に、首なし騎士の方に走っていってしまうあの恐怖!
うわ昔こんな悪夢見たことあるぞ…とぞわっとさせられてしまいましたね…。
そしてイカボードは逃げて、逃げて、逃げて…。
場面は朝になり、ナレーションはこう語るのです。
翌朝、イカボードの帽子が見つかりました。
その横には、かぼちゃが潰れています。
しかし、先生の姿は消えていました。
……え??
…………えええ???ここで、物語が終わるの??
…はい、ここで物語が終わるんです。
この結末こそ、ディズニーファンたちの間で有名な理由。
結局イカボードはどうなったのか?ははっきりと語られること無く、むしろ彼の不在というバッドエンドを全力で匂わせるような、後味の非常に悪い終わり方をするのです。
ついでに、イカボードが姿を消したことによりカトリーナはブロムと結ばれる…などというイカボードにとってはバッドエンドとしか言いようがない事態に。
こうして観客は、え?えええ???と思わせられたまま、エンディングにあの『首なし騎士』の歌が流れてきてそのまま映画が終わるのです。
おめでとうございます、今夜の夢の内容はこれで確定しましたね……。
【まとめ】一度見たら忘れられない
今回の記事では、ディズニー長編アニメーション映画『イカボードとトード氏』より、後半の『イカボードと首なし騎士』についてネタバレ感想をお伝えしました。
他のディズニー作品では決して味わうことのできないような、なんとも言えない心情に浸ることのできる珍しい映画。
前半の軽くコミカルなシーンからの後半のホラーのギャップも素晴らしく、きっと引き込まれ、そして忘れられない作品となることでしょう。
Twitterでは主に映画についてタイムリーにつぶやいています。
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