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『ウィッシュ』ネタバレ感想&考察&ストーリー解説|マグニフィコ王は本当に“史上最悪のヴィラン”なのか?─ディズニーファン目線の結論

『ウィッシュ』ネタバレ感想&考察&ストーリー解説|マグニフィコ王は本当に“史上最悪のヴィラン”なのか?─ディズニーファン目線の結論

こんにちは、ゆーです!

 

今回は、ディズニー長編映画『ウィッシュ』のストーリーからネタバレ感想&考察まで語っていきたいと思います。

 

ディズニー100周年記念作品『ウィッシュ』、は賛否が分かれがちの作品です。その理由もよく分かる。

…でも私は観終わって、素直にこう思いました。

「ああ、ディズニーを好きでいて良かったな」と。

 

この記事では、ロサス王国の仕組みから物語をネタバレで丁寧に振り返りつつ、

  • “願い”って結局なんなのか
  • マグニフィコ王は本当に“史上最悪のヴィラン”なのか
  • 『ウィッシュ』は何を伝えたかったのか

 

このあたりを、ディズニーファン目線でまっすぐ語っていきます。
(※ここから先はネタバレありです!)

 

 

ゆー

人により評価が分かれがちのこの作品。
ディズニーファンの目線で、ストーリーを詳しく振り返りつつ、映画で伝えたかったことについて考察していきます!

 

 

映画概要・あらすじ(ウィッシュ)

劇場公開日米:2023年11月22日
日:2023年12月15日
監督クリス・バック、ファウン・ヴィーラスンソーン
製作ピーター・デル・ヴェッコ
フアン・パブロ・レイジェス
ランカスター=ジョーンズ
上映時間95分

願いが叶う魔法の王国ロサスに暮らす少女アーシャの願いは、100才になる祖父の願いが叶うこと。だが、すべての“願い”は魔法を操るマグニフィコ王に支配されているという衝撃の真実を彼女は知ってしまう…。みんなの願いを取り戻したいという彼女のひたむきな思いに応え、夜空から舞い降りてきたのは“願い星”のスター。スターに導かれ、相棒である子ヤギのバレンティノら仲間と共に、アーシャは立ち上がる。
「願いが、私を強くする」――アーシャとスターの運命の出会いが、王国に巻き起こす奇跡とは…?

https://www.disney.co.jp/fc/wish

 

【ネタバレ感想】映画『ウィッシュ』を振り返る

以下より物語のネタバレを含みます

 

①平和で魔法の溢れる国・ロサス

ロサス王国建国の歴史とサビーノの願い

物語は『ウィッシュ』の物語が描かれた絵本のページを開くところから始まります。

最初に語られるのは、ロサス王国建国の歴史。

 

昔々あるところに、”願いは何よりも大切”と信じる若者がいました。
ただの願い事ではなく、その人の心を突き動かし生き方を示すような願いです。
でも願いを叶えるのは難しいことを彼は分かっていました。
夢はたちまち壊れてしまうからです。

そこで彼はある方法を考えました。
世界中の魔法をすべて学んで偉大な魔法使いになり、人々の願いを預かり守ることにしたのです。
善良なものの願いなら叶えてあげてもいい

人々がどう望むかはともかく、彼と忠実な妻は地中海の彼方に完璧な島を見つけました。
そこに今までにない王国を築いて、誰でもどこから来ようとも平等に迎えたのです。
あちこちから大勢やってきてその島に住み着き、彼に願いを差し出したのです。
いつか必ず叶えてもらえると信じて。

 

そんなロサス王国に住む主人公のアーシャは、ちょうど100歳の誕生日を迎える祖父のサビーノ母親のサキーナとの三人暮らしをしています。

 

マグニフィコ王に差し出した願いは、月に一度の儀式で一人の国民を王が選び、その人の願いが叶えられる仕組み。

サビーノが100歳を迎えた今夜に儀式が行われる、ということで、アーシャは「今夜願いが叶えられるのはサビーノかもしれない」と期待しつつ、王国の案内をする仕事を務めるのでした。

 

ここで歌われるのが「ようこそ!ロサス王国へ (Welcome To Rosas)」という一曲。

アーシャを中心に、ロサスの住人がロサスを訪れた人々に対してロサスの紹介をする曲で、明るくアップテンポな曲調が魅力的でしたね~!

今のロサスという国で人々がどう生活しているか、そしてそれがいかに素晴らしいものかを歌い上げるもので、見ていて明るい気分になる一曲でした。

 

ゆー

物語冒頭の始まり方といい、曲の中の演出といい、さすがディズニー100周年記念作品!と言うべき数々のオマージュが散りばめられていて、そういった目線でも楽しめます☺️

 

マグニフィコ王の弟子の面接

案内の仕事を終えたアーシャは城の地下にあるキッチンにいる友人のダリアの元へ。

アーシャはこの後マグニフィコ王の弟子になるための面接を控えており、ダリアにアドバイスを求めに来ていたのでした。

 

アーシャにはダリアの他に6人の友人がおり、それぞれサイモン・ガーボ・サフィ・ハル・パジーマ・ダリオという名前。

この友人7人組もアーシャのもとに顔を出し、賑やかなやり取りを繰り広げたところで、アマヤ王妃がアーシャを呼びにやってきます。

 

マグニフィコ王と対面し緊張するアーシャ。

禁断の魔術書に触れそうになったり、聞かれてもいない内容に解答してしまったりとその緊張っぷりを発揮させますが、「ロサスの民を愛しているマグニフィコ王の手助けがしたい」という真っ直ぐな思いがマグニフィコ王の心を動かします。

そして王はアーシャを、他の人には見せようとしなかった”願いの部屋”へと誘うのでした。

 

ゆー

「白雪姫と七人の小人」をイメージしたというアーシャの友人7人組。
それぞれの特徴も、まさに白雪姫の小人たちと同じで分かりやすかったですね!

 

願いの真実とアーシャの決意

マグニフィコ王がアーシャに見せた願いの部屋。

そこには、ロサスの国中の人々が彼を信じて預けた願いたちが、綺麗なガラス玉のようなものに入れられ、ふわふわと浮かんでいたのでした。

 

そんな願いたちを見つめて、マグニフィコ王とアーシャが歌うのが「At All Costs」

人々の願いがいかに貴重でかけがえのないものであるかを歌い、それを心から大切に守っていくという決意を語るマグニフィコ王。

そんな願いたちに初めて触れて、それを守るということがどういうことかを理解するアーシャ。

 

そして歌の中で、アーシャは祖父サビーノの願いを見つけます。

それは”音楽で人を鼓舞したい”という、温かく素敵なもの。

アーシャはそんな祖父の願いを叶えてもらえるよう王に頼みますが、マグニフィコ王は「人々を鼓舞して反乱を先導する危険がある」とその頼みを断り、サビーノの願いを叶えることは無いと言い放ちます。

 

そう、マグニフィコ王は全国民の願いを預かり、守り、月に一度の儀式で願いを叶える。

でもそこで叶えられる願いは、あくまでマグニフィコ王のお眼鏡に適ったもののみ。

それ以外のほとんどの願いは一生叶えられることはなく、ただただ”願いの部屋”で美しく浮かんでいるだけなのです。

 

いつか願いが叶えられると信じて託しているのに話が違う、と食い下がるアーシャに、「すべてを決めるのはこの私だ」と言い切り突き放すマグニフィコ王。

結局その夜の儀式ではサビーノの願いは叶えられることはなく、アーシャも弟子の面接の不合格を言い渡されるのでした。

 

ゆー

わざわざアマヤ王妃の隣にアーシャを座らせ、あたかも”弟子に合格した”と見せかけつつ不合格と告げる…。
マグニフィコ王の本性が見えたワンシーンでしたね。

 

②願い星”スター”の導き

アーシャの思いに応えた”スター”

落胆するサビーノに対し、「祖父の願いは美しいが、マグニフィコ王はもう叶えてくれないだろう」と告げ、祖父も自身の願いを知るべきだと伝えるアーシャ。

ところがサビーノは「マグニフィコ王が言うならそれが正しいのだろう」と落胆しつつもアーシャを拒否。

失意のままアーシャは家を飛び出します。

 

ここでアーシャによって歌われる一曲が、映画の主題歌でもある「ウィッシュ~この願い~ (This Wish)」

今まで何も疑問に思わず、マグニフィコ王を信じて願いを託してきたロサスの民。

でも自分だけはその真実ーほとんどの願いが叶えられない、ということを知ってしまった。

マグニフィコ王に託した願いは、その人の生き方を示すような、その人の一部と言うべきかけがえのないもの。

だから、それが永遠に叶えられないのならば、その人本人に返したい。

 

そう願うアーシャの強い思いと決意を歌い上げる一曲で、迷いながらもアーシャ自身の力強さを感じられる良いシーンでしたね。

 

そんなアーシャの強い願いに応えたのは、”スター”

空から舞い降りたスターは森に魔法を振りまき、森の動物たちやアーシャとともに暮らすヤギのバレンティーノに言葉を与えるのでした。

 

ここで歌われるのが、森の動物たちとバレンティーノがメインで歌う「誰もがスター! (I'm A Star)」

スターの魔法に驚きを隠せないアーシャが口にした「なぜ星に思いが伝わったの?」「こんなこと、ある?」という疑問に答える形で、森の動物たちが歌い上げます。

 

この曲もとっても楽しい楽しい楽曲で、ディズニー作品のオマージュもてんこ盛りで面白かったですね!

一曲の中で繰り返し語られる「I'm A Star」「You're A Star」というメッセージ。

まだまだ物語は序盤でありつつも、映画全体で伝えたいことが凝縮されているメッセージだなと思います。

 

ゆー

シンプルな造形のキャラクターなのに、表情と動作で感情表現が豊かなスターが可愛い~!!

 

家族の願い奪還作戦とマグニフィコ王の怒り

スターの協力、そして7人組の友人の協力を得て、家族の願いを奪還すべくマグニフィコ王の”願いの部屋”に忍び込むアーシャたち。

一方マグニフィコ王は、スターが舞い降りた時の”魔法”に脅威を感じ、ロサスの民に「違法な魔法を使った人間を告発せよ」と呼びかけます。

 

が、これに対しロサスの民は疑問を隠せず。

「国王以外は魔法を使えないのでは無かったのか」「願いは無事なのか」とマグニフィコ王に対し無遠慮な質問を投げかけることに。

ある程度まではにこやかに対応していたマグニフィコ王でしたが、最終的には堪忍袋の緒が切れてしまい。

「無礼者たちへ (This Is The Thanks I Get?!)」という一曲を力いっぱい歌い上げるのでした。

 

この「無礼者たちへ (This Is The Thanks I Get?!)」という曲、作中の曲の中で個人的に一番好きな楽曲です。笑

もちろんマグニフィコ王、これまでの経緯を考えると、大変な努力家でその上平和な国を築いているわけなので凄い人であるのは間違いないのですが、それ故に構築されたプライドの高さがこの曲でついに露呈。

 

曲の後半ではもうロサスの民を蹴っ飛ばして踏みつけるなどもう自棄になっちゃってますし、最終的には禁断の魔術書に手を出してその本に取り込まれてしまうわけです。

マグニフィコ王、という人物が見事なまでに超えてはいけない一線を踏み越える瞬間を描いており、その鮮やかさにニヤニヤしてしまうシーンでもありますね…。笑

 

ゆー

どんどん行ってはいけない方向に垂直落下していく様子があまりにも鮮やかな一曲です。

 

逃亡者・アーシャ

なんとかサビーノ、サキーナの願いを持ち帰ったアーシャ。

願いを取り戻したサビーノは、その胸の温かさを思い出し、願いはなくても良いとアーシャに告げてしまったことを詫びます。

 

次にサキーナに願いを返そうとしたその時、現れたのはマグニフィコ王でした。

「密告があった」とアーシャとスターの居所を突き止め、サキーナの願いを破壊し、人々の願いを犠牲にして作った強力な杖を用いてアーシャたちを追い詰めます。

 

何とかマグニフィコ王から逃走したアーシャ・サキーナ・サビーノ。

サキーナの願いを取り戻せなかったこと、あまつさえ破壊されてしまったこと、そして皆の願いが同様に危険にあることで落ち込むアーシャでしたが、スターの励ましもありマグニフィコ王と対決することを決意。

サビーノとサキーナは避難させ、自らは城に戻っていくのでした。

 

城に戻ると、なんとマグニフィコ王が破壊した願いはアーシャが犯人とされ、アーシャの友人たちも同様に犯人の一味として追われる身となっていました。

そこで一計を案じたアーシャは、不安そうな顔をしているアマヤ王妃にメッセージを託し、その場から逃げた友人たちを追って城の奥へと進んでいきます。

 

ゆー

守ると誓ったはずの願いを破壊し、それをあまつさえアーシャのせいにし、自らは願い力に酔いしれるマグニフィコ王。
完全に魔術書に取り込まれ、邪悪なヴィランムーブを地で行くようになっていました…。

 

③願いの危機とマグニフィコ王との対決

アーシャと仲間たちの決意と作戦

仲間たちが逃げたのは、照れ屋のパジーマの秘密の隠れ家。

そこにアーシャも合流し、ともにマグニフィコ王と戦う決意を固める一曲「真実を掲げ (Knowing What I Know Now)」を歌い上げます。

 

ここでぐっと来たのが、曲の途中でアマヤ王妃が合流したところ

アマヤ王妃はアーシャのメッセージを受け取って隠れ家に現れ、マグニフィコ王のことをずっと愛していた。信じていた。信じていたかった。と語りつつ、禁断の魔術書に取り込まれた今彼は変わってしまった。だから戦わなければならない…と語るのです。

 

長年愛した相手、信じた相手が変わっていく様を目の当たりにして、それを愛したものの責任として止めなければならない。なんとシビアな状況…とアマヤ王妃の心中を思わずにはいられません。

どんな人も、ずっと変わらずにいる、というのは難しいことではありますが、その変化が愛や信頼を捨て去らなければいけないところまで来る、というのは悲しいことだと思います。

 

かくして立ち上がったアーシャと友人、アマヤ王妃。

アマヤ王妃の協力のもとアーシャがマグニフィコ王を森に引き付け、その隙に友人たちが”願いの部屋”を解放する…という作戦でしたが、マグニフィコ王の強力な魔法によりあえなく失敗。

スターは捕らえられ、すべての願いの力がマグニフィコ王の手にわたり、ロサスの民もマグニフィコ王の魔法により身動きを封じられてしまうのでした。

 

ゆー

アマヤ王妃、ずっとマグニフィコ王を信じて愛してきたのにな…、今までの幸せな日々を投げ打って対決しなくてはならない、というのは辛かっただろうな、と思います。

 

”願い”とは何か

すべての願いの力を手に入れて王国に君臨したマグニフィコ王。

アーシャは弱々しくも「This Wish (Reprise)」を歌い始めますが、それもマグニフィコ王によりすぐに止められてしまいます。

 

もうだめかと思われたその時、かすかにアーシャの歌を歌い継ぐ声が聞こえた。

その声は段々と大きくなり、気がつけば王国の民全員が心を一つに、声を一つに歌っていました。

 

ずっと待ち続けた 願いが叶う日を
もう待たない 自分で叶えよう
むなしい約束 もう頼らない
希望を胸に進めとあなたが教えてくれた

 

王国の民全員の願いの力。それは杖に捕らえられたスターを解放する力になりました。

こうしてスターは力を取り戻し、マグニフィコ王によって吸収されてしまった願いは皆のもとに帰っていく。

マグニフィコ王は魔術書の代償として、杖に閉じ込められてしまい、一件落着となるのでした。

 

これまでロサスの人々は、マグニフィコ王を盲目的に信じ、”願いはいつか待っていれば叶うもの”と思い生きてきました。

そんな生き方を大きく変えて、それでも自らの願いは自らの手で叶えるのだと力強く歌うこのシーン。

”願い”とは何か。そのことに対する見事なアンサーとなるシーンだったなと思います。

 

ゆー

皆が声を揃えて力強く立ち上がるシーン、ぐーっと胸が熱くなります…!こういうシーンに弱いんだよなあ…。

 

ロサス王国のその先

晴れてそれぞれの願いはそれぞれのもとに戻ったロサス王国。

アマヤ王妃が国王となり、そんな人々の願いを叶えるため地道に尽力を続けることになります。

 

一方アーシャは、スターから魔法の杖を受け取り、”フェアリー・ゴッドマザー”として人々の願いを叶えるお手伝いができるように。

そしてスターは、次の願いを聞き届けるためにロサス王国を去っていくのでした。

 

ゆー

願いは誰かに託して、あるいは祈って叶えてもらうものではなく、自らの手で掴み取るもの
それを体現したような王国にロサスが変わっていく様子を描き、物語は幕を下ろします。

 

総合的な感想

ディズニー100周年記念作品として公開された『ウィッシュ』。

ディズニーらしくミュージカル要素も盛り盛りで、どの曲も楽しく耳に残る素敵なシーンで総じて楽しい映画でしたね~!

 

個人的にはやはり、アーシャに鼓舞された王国の民が心を合わせて立ち向かう…という構図が大好物で。

初めてこの作品を見た時、大勢のコーラスで力強く歌うシーンを見て、ぐっと心に響いたのを覚えています。

 

マグニフィコ王は”史上最悪のヴィラン”なのか

とはいえ、賛否両論が絶えない作品であることも重々知っています。

主な原因は、ディズニー側がこの作品に登場するマグニフィコ王を”史上最悪のヴィラン”と位置づけていること。

「そんなにマグニフィコ王は悪いか?」「そもそもマグニフィコ王は悪ではないのでは」「王国の平和をかき乱したアーシャが一番悪いのでは?」

…といった意見を日々日々目にしています。

 

だけど、そんな世論に対して私は思うんです。

間違いなく、マグニフィコ王は”(ディズニー)史上最悪のヴィラン”である、と。

 

まずはマグニフィコ王が何をしてきたか?を振り返ってみましょう。

 

良いと思われること

  • ロサス王国をゼロから建国した
  • 人々のために魔法を学び、願いを叶える力を手に入れた
  • 他の場所から来る人々を、分け隔てなく受け入れた
  • 100歳のサビーノが元気に暮らせるほどインフラや福祉が整った国を運営した
  • 身寄りのない人や貧しい人を城に住まわせた
  • 父を失ったアーシャのような人に経済的な支援をした
  • 月に一度人々から預かった願いを叶えてあげた

 

悪いと思われること

  • 18歳になった人々から願いを預かった
  • 預かった願いは基本的には叶える気はなく、願いの間に閉じ込めた(本人曰く”守った”)

 

いかがでしょうか。

これを見ると、「あれ、マグニフィコ王そんなに悪いことしてなくない?」という意見が出るのもご尤も…、と言いたくなるような華やかな経歴です。

 

ただ、「人々から願いを預かり」、かつ「願いを閉じ込めた」こと。

これが決定的に、ダメなんですよね。

 

いやいやいや、ぶっちゃけ「願いを預ける」だけで、運が良ければ叶えてもらえるかもしれないし、平和な国に住む条件としては悪くないのでは?

というのが恐らく世間一般的な見方なんだと思います。

 

でも、私には分かる。

これまで、ディズニーの夢と魔法とともに育ち、生き、その可能性と力を十分に知っていて信じている私には分かる。

 

どんなに良い条件を示されても。それがどんなに良いように見えても。

人々が自らの願いを失う、ということは、それら全てに勝るほどの悲しいことで。

そんな願いを取り上げる存在は紛れもなく”悪”なのだと。

 

『ウィッシュ』はディズニーファンに向けたラブレター

個人的には、『ウィッシュ』という作品は、100%ディズニーファンに向けた作品だったのだと思います。

 

ディズニー作品においては、”願い”というものは何にも勝る重要なもの。

ディズニーのどんな素敵な物語も、その出発点は”願い”でした。

 

素敵な王子様に巡り合いたい。空を飛びたい。未知の世界に行ってみたい。

そんな”願い”があったからこそ、主人公は道を切り開き、困難に立ち向かい、叶える事ができた。

 

もしここにそもそも”願い”というものが無かったら?

それら全ての物語は生まれず、主人公というものも存在しなかったことになるわけです。

 

だから、仮にどんなに良いように見えても。

それこそロサス王国のように、インフラや社会制度が整い、皆が一見幸せそうに暮らしていても。

何があっても、”願い”だけは無くてはならないものなのです。

 

作中の曲「誰もがスター! (I'm A Star)」ではそのことをものすごく直接的に語ってくれているんですよね。

改めて”Star”という言葉を辞書でひいてみると、こんな風に表現されています。

 

star
別表記:スター

「star」とは、星のことを意味する表現である。
「star」とは・「star」の意味
「star」とは、主に「星」や「星の形をしているもの」を意味する名詞である。宇宙空間にはたくさんの天体があるが、「star」は自ら光を発している天体で、日本語では「恒星」を指す。自ら光を発しない天体は「惑星(planet)」と呼ばれ、太陽系を例にすると「star」は「太陽」で、太陽以外の地球や火星、土星などは全て「惑星」となる。また「映画スター」のように、芸能人の人気者やスポーツ界の花形選手など、特定の集団の中で秀でている人物を意味する表現にも使われる。これも宇宙空間における星のように、無数に存在している中で光り輝いていることから「スター」と呼ばれるようになった。

なお、「star」は不可算名詞ではなく可算名詞であるため、複数形は「stars」となる。夜空の星は見ただけでは瞬時に数えられないため不可算名詞と考えられがちだが、方法によっては数えられるため可算名詞となっている。動詞としても使われることがあり、その場合は「主役を演じる」という意味となる。「He is the star in this movie.(彼はこの映画の主役です)」のように使う。

https://www.weblio.jp/content/star

 

”自ら光を発している天体”である「恒星」としてのstar。そして、同士として用いる場合は「主役」という意味を持つstar。

すなわちあの曲では、「願いを持っている存在は誰だって光り輝く恒星であり、主人公だ」ということを言っているんです。

だからこそ、”願い”は何にも勝る大切なものなんだ、と。

 

長年ディズニーファンをやっている身としてはこの理屈がもはや常識のようなところがあるので、そりゃ当然、願いを実質的に奪っているマグニフィコ王は過去最悪に邪悪なヴァランとなるわけです。

もしマグニフィコ王が認められる世界だったら、ディズニーの物語はすべて誕生しない事になってしまうのですから。

そういった意味で『ウィッシュ』は「すべてのディズニー映画の原点の物語」と表現しているのだと思います。

 

ただこれが万人に受け入れられたか?というと恐らくそうではなく、それ故に興行収入が低迷した、ということなのだろうなと思います。

『ウィッシュ』制作陣がどこまで意図していたかは分かりませんが、もしかしたらある程度一般受けしないことを折り込み済みで、それでも”ディズニーファンに届け”という思いで制作してくれていたのかもしれない…とも思っています。

 

いずれにせよ、ディズニーファンの身としては、ものすごく真っ直ぐ響く素敵なメッセージを受け取りました。

これからもディズニーは何を置いても”願い”を重要視するし、そのことが奇跡を起こすのだ、と。

だから私は『ウィッシュ』を見て一番に思った感想はこれでした。

「ああ、ディズニーを好きでいて良かったな」と。

 

ご褒美のようなエンドロール

『ウィッシュ』のエンドロールでは、歴代のディズニー作品に登場するキャラクターたちが星屑となって映し出されます。

 

ああ、この作品もあった、この作品も良いし、この作品も面白かった…。

作品を見終えたときに、次々流れてくる歴代のキャラクター、それもあまり有名にならずに日の影に潜んでいるようなキャラクターも含めて映し出されていくのを見て、思わず涙してしまった部分でもあります。←

 

最後に、そんなエンドロールで流れた全てのキャラクターを一覧にしてみたので、良ければ参考にしてみてください。

 

公開年キャラクター作品名公開日
1937白雪姫白雪姫1937年12月21日
1940ピノキオピノキオ1940年2月7日
1940ミッキーマウス魔法使いの弟子(ファンタジア)1940年11月13日
1941ダンボダンボ1941年10月23日
1942バンビバンビ1942年8月13日
1949イカボード・クレインスリーピー・ホローの伝説(イカボードとトード氏)1949年10月5日
1950シンデレラシンデレラ1950年2月15日
1951チェシャ猫ふしぎの国のアリス1951年7月28日
1953ピーター・パンピーター・パン1953年2月5日
1955レディ、トランプわんわん物語1955年6月16日
1959マレフィセント眠れる森の美女1959年1月29日
1961ポンゴ101匹わんちゃん1961年1月25日
1963マーリン王様の剣1963年12月25日
1967バルージャングル・ブック1967年10月18日
1970マリーおしゃれキャット1970年12月11日
1973ロビン・フッドロビン・フッド1973年11月8日
1977プーくまのプーさん1977年3月11日
1981トッド、コッパーきつねと猟犬1981年7月10日
1986バジルオリビアちゃんの大冒険1986年7月2日
1988オリバーオリバー ニューヨーク子猫ものがたり1988年11月18日
1989アリエルリトル・マーメイド1989年11月17日
1991ベル、野獣美女と野獣1991年11月22日
1992アラジンアラジン1992年11月25日
1994シンバ、ラフィキライオン・キング1994年6月24日
1995ポカホンタスポカホンタス1995年6月23日
1996カジモドノートルダムの鐘1996年6月21日
1997ヘラクレスヘラクレス1997年6月27日
1998ムーランムーラン1998年6月19日
1999ターザンターザン1999年6月18日
1999ヨーヨー・フラミンゴ動物の謝肉祭(ファンタジア2000)1999年12月17日
2000アラダーダイナソー2000年5月19日
2000イズマラマになった王様2000年12月15日
2001マイロ・サッチアトランティス 失われた帝国2001年6月15日
2002スティッチリロ&スティッチ2002年6月21日
2002ジム・ホーキンストレジャー・プラネット2002年11月27日
2003コーダブラザー・ベア2003年11月1日
2004マギーホーム・オン・ザ・レンジ にぎやか農場を救え!2004年4月2日
2005チキン・リトルチキン・リトル2005年11月4日
2008ボルトボルト2008年11月21日
2009ティアナプリンセスと魔法のキス2009年12月11日
2010ラプンツェル塔の上のラプンツェル2010年11月24日
2012ラルフシュガー・ラッシュ2012年11月2日
2013エルサアナと雪の女王2013年11月27日
2014ヨウカイ(ロバート・キャラハン教授)ベイマックス2014年11月7日
2016ジュディ・ホップス、ニック・ワイルドズートピア2016年3月4日
2016モアナモアナと伝説の海2016年11月23日
2021ラーヤラーヤと龍の王国2021年3月5日
2021ミラベル・マドリガルミラベルと魔法だらけの家2021年11月24日
2022スプラットストレンジ・ワールド/もうひとつの世界2022年11月23日

 

まとめ

 

今回の記事では、映画『ウィッシュ』について、ネタバレ感想をお届けしました。

 

映画についてのまとめ
  • 『ウィッシュ』は“願い”の価値を、ディズニー作品の原点として描いた物語
  • ロサス王国は一見理想郷だけど、願いを“預ける”仕組み自体が危ういのが核心
  • アーシャがスターと出会い辿り着く答えは、願いは祈って叶えてもらうものじゃなく、自分で掴み取るもの
  • 「This Wish」や「I’m A Star」など、曲がストーリーのテーマを真正面から言語化してくれるのが強い
  • マグニフィコ王は“善政”もあるが、人々から願いを奪い、選別し、閉じ込めた時点で決定的にアウト(=ヴィラン論の結論)
  • みんなが声を揃えて立ち上がる終盤は、“願いは個人の中に戻る”瞬間として胸が熱くなる
  • エンドロールはディズニーファンへのご褒美タイム。歴代キャラの星屑演出が刺さる人には刺さる

 

今回の記事では、ディズニー長編映画『ウィッシュ』について、ストーリーをネタバレありで振り返りつつ、作品が伝えたかった“願い”の意味を考察しました。

一見すると理想郷に見えるロサス王国でも、「願いを預ける」ことの代償はあまりにも大きい。だからこそ私は、マグニフィコ王を“(ディズニー)史上最悪のヴィラン”だと思っています。

そしてアーシャとスターが辿り着く答えはとてもシンプルで、でも力強い。願いは、祈って叶えてもらうものじゃなくて、自分で掴み取るもの。

賛否が割れるのも分かりますが、ディズニーファンとしてはまっすぐ刺さる、100周年にふさわしい“ラブレター”のような作品でした。

 


 

BeePlus【びーぷらす】では、他にもディズニー作品の解説、ネタバレ感想&考察を行っているため、合わせてチェックしてみてください!

 

また、ディズニー長編アニメーション映画一覧については以下記事にまとめています。

「ディズニーアニメって他に何があるの?」「いまどれくらい見たことがあるんだろう?」とお悩みの方は、ぜひこちらも見てみてください。

 

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