『ズートピア』はなぜ名作なのか?ネタバレ感想&考察&ストーリー解説 | 物語・キャラ・社会風刺まで語り尽くす

こんにちは、ゆーです!
今回は、ディズニー長編映画『ズートピア』のストーリーからネタバレ感想&考察まで語っていきたいと思います。
ずっと大好きで何度も見返しているディズニー映画のひとつである、『ズートピア』。
「すべての哺乳類が、何にでもなれる街」というキラキラしたキャッチコピーとは裏腹に、実はかなり“現実”を突きつけてくる物語なんですよね…。
今回はそんな『ズートピア』について、物語を振り返りつつ、ジュディの成長やニックとのバディ関係、ズートピアという街が抱える闇と希望まで、ネタバレありでじっくり語っていきます。
「ズートピア久しぶりに見たくなった…!」となってもらえたら嬉しいです☺️
シリーズ2作品目の公開もあり、盛り上がりを見せる『ズートピア』!
その物語を振り返りつつ、ネタバレ感想&考察をお届けします~!
映画概要・あらすじ(ズートピア)
| 劇場公開日 | 米:2016年3月4日 日:2016年4月23日 | ||
|---|---|---|---|
| 監督 | バイロン・ハワード リッチ・ムーア | ||
| 製作 | クラーク・スペンサー | ||
| 上映時間 | 108分 | ||
そこは、動物たちの<楽園>…のはずだった。
故郷の田舎町から憧れのズートピアにやってきたウサギのジュディ。彼女の夢は、「立派な警察官になって世界をよりよくする」こと。
でも警察官になれるのは、サイやカバなどタフな動物だけ…けれどジュディは、現実の壁に立ち向かいながらも夢をあきらめず、見事“ウサギ初!”の警察官に!
しかし、サイやゾウなどの同僚たちが動物たちの連続行方不明事件の捜査に向かう中、ジュディに与えられた任務は駐車違反の取り締まりだった。能力を認めようとしないスイギュウのボゴ署長に憤慨したジュディは、驚異的な仕事ぶりを見せる。
ある日、街で困っているキツネの親子を助けたジュディだが、実は彼らは夢を信じない詐欺師のニック達であった。そんなニックに対して、騙されていたことへ腹を立てながらもジュディはあきらめない。
カワウソのオッタートンの行方不明事件が未捜査だと知ると、「私が探します。」と宣言する。ヒツジのベルウェザー副市長の後押しもあり、ボゴ署長はしぶしぶ認めるも、与えられた時間はたった48時間。失敗したらクビで、彼女の夢も消えてしまう…。
手がかりがほとんどなく、唯一の頼みの綱は事件の手がかりを握る詐欺師のキツネ、ニックだけ。最も相棒にふさわしくない二人は、互いにダマしダマされながら聞き込み調査を続け、有力情報をたよりにツンドラ・タウンの一台の車にたどり着く。その車内には、行方不明のオッタートンの痕跡が!
だが、その車はなんとツンドラ・タウンの闇のボス、ミスター・ビッグの車だった。ジュディとニックは手下に捕らわれるも、なんとか危機を逃れる。しかし、危機を乗り越えた二人を待っていたのは、ズートピアで何かが起こっていることを予感させる衝撃の光景だった!
ボゴたちが到着した時には、その証拠は消えジュディの言葉は誰にも信じてもらえない。しかも、大きな成果を得られないまま約束の48時間まで残り10時間――ついにジュディはボゴから「クビ」を宣告されてしまう。夢を失う危機に落ち込むジュディを救ったのは、ニックの意外な一言だった…。
果たして、ジュディの夢を信じる心は楽園の秘密を解き、世界を変えることができるのか?
【ネタバレ感想】映画『ズートピア』を振り返る
以下より物語のネタバレを含みます
①憧れのズートピアとジュディの挫折
警察官を夢見るジュディ
物語は主人公のウサギの女の子・ジュディが自らの夢を語る、幼い頃の演劇のシーンから始まります。
ジュディは小さくか弱いウサギでありながら、”世界をより良くする”ために、警官を目指す女の子。
ところが、ズートピアの世界では過去にウサギが警官になった前例はなく、もっぱらサイやチーター、虎にカバなどのタフな動物だけが警官として活躍していました。
それ故、ジュディが警官になる、という夢を語ると周囲は大騒ぎ。
そんなことは出来っこない。諦めろ。と。
同郷のキツネのギデオンには、その夢をバカにされて暴力すら振るわれてしまい。
ジュディの両親ですら、我が子を心配する余り「頼むからやめてくれ」と本人に頼み込むほどです。
それでもジュディは諦めず、ズートピア警察学校に入学。
数々の試練を乗り越え、見事首席で卒業し、ズートピア中心部の警官としての配属が決定するのでした。
警察学校で文字通り何度も”壁”にぶち当たってもへこたれないジュディの姿がかっこいい…!
人知れず努力を続けることで自ら道を切り開いていきます。
ついに憧れのズートピア、ZPDへ
ズートピア特急に乗り込み、いざ憧れのズートピアへ!
主題歌の「♪Try EveryThins」が響き渡る中、ジュディを乗せた特急は、すべての動物が仲良く暮らす楽園ーズートピアの中心部を目指していきます。
この一曲の間で描かれるズートピアの景色が素晴らしいんですよね…!
ズートピアは各動物の習性に合わせていくつかの区画に分かれているんですが、それらすべてを形作っているのは緻密に張り巡らされたシステムによるもの。
例えば極寒の雪の地域である”ツンドラタウン”では、常に気温を保ち雪を降らせるシステムがあり、常に雨が降りしきる”レインフォレスト”で雨を降らせているのは、スプリンクラーのような設備。
到底今の技術力(と資源)では無理だろうな…、と思うようなまるで夢のようなシステムや設備がフル稼働している姿をたっぷり一曲を使って見せてくれるので、本当に楽しいシーンです。
そしてジュディはついにズートピア中心部に到着。
ちょっと期待外れな下宿先のお部屋に無事収まり、ズートピア警察署ーZPDへの初出勤の日を迎えるのでした。
主題歌の「♪Try EveryThins」、明るく空に抜けていくような力強いメッセージがとっても良いんですよねー!!
立ちふさがる”現実”の壁とニックとの出会い
意気揚々とZPAにやってきたジュディを待ち受けていたのは、厳しい”現実”の壁でした。
ウサギとして初めての警察官。それも、警察学校の首席。
であるにもかかわらず、朝礼ではまるでいないかのように扱われ、主要な事件の捜査にも加えてもらえず、割り振られたのは駐車違反取り締まり係。
本当は重大事件の捜査に関わって、街を良くしたいのに。
そんな不満を抱えつつ、それでもやる気を出して駐車違反取り締まり業務を遂行していたジュディの前に現れたのは、ゾウ用の巨大アイスの購入を断られた、キツネの親子・ニックとフィニック。
ジュディは二人を助けたものの、後にニックとフィニックは親子などではなく、購入した巨大アイスを用いてアイスを転売する詐欺師であることが判明します。
ジュディはニックを問い詰めるものの、逆にニックから冷たい言葉を浴びせられてしまうのでした。
ジュディの警察官としての初日は散々。
傷心して下宿先に戻るも、ジュディからしたら脳天気な両親からの電話と、うるさい隣人に、傷ついた心に追い打ちをかけられます。
警察官の同僚、上司、たまたま出会った詐欺師のニック、両親、隣人。
ここまで1日で盛り沢山な踏んだり蹴ったりっぷりもなかなか無いよな…、と見ていて切なくなるこの場面。
最後に隣人から「そんな陰気な音楽を流すのはやめろ!」と言われた場面では、あまりにどうしようもなさすぎてもはや笑えてきましたね…。
傷つきながらも、ここで完全に心が折れること無く翌日を迎えるジュディ、凄いなあ…。
②ニックとジュディの出会いと行方不明事件
強盗事件の追跡とタイムリミット付きの行方不明事件の捜査
翌日。ジュディが引き続き駐車違反の取り締まりを行っていると、目の前で強盗事件が発生!
意気揚々と犯人のデュークを追跡し、ネズミの女性を救いつつ何とか確保したものの、署長のボゴには「職務放棄」であり「たかが玉ねぎのために危険な追跡をした」と怒鳴られる羽目に。
そこに、カワウソのオッタートン婦人が、夫の捜索を求めて二人の基に現れます。
ジュディはベルウェザー副市長の後押しもあり、ジュディはその場でオッタートンの捜索を引き受けますが、ボゴ署長には「48時間以内に解決できなければクビにする」と言い渡されてしまうのでした。
ズートピア中心部にあるネズミの街「リトル・ローデンシア」。
小動物であるはずのジュディにとってもそれは小さな街で、まるでドールハウスの中のような可愛らしい風景が良かったですね~!
と同時に、”すべての動物が仲良く”と言っても、ネズミとその他の動物では流石に住む場所を分けないと行きていけないほど”違う”のか…、と思い知らされるシーンでもありました。
オッタートン探しとニック×ジュディのタッグ誕生
ジュディは僅かな手がかりをもとに、ニックがオッタートンの行方を知っていると確信。
再びアイスを転売しようとしているニックに接触を図り、自前の”ニンジンペン”を用いてニックの発言を録音。
これを脱税の証拠として弱みを握り、協力を強制するのでした。
ここで思いっきりニックがしてやられるシーンが非常に痛快で面白い!
常に”騙す側”に立っていると思っていたニックが、逆にジュディにしてやられる、という構図も良いですし、あれほど自信満々だったのに…、と思うと思わずニヤけてしまいます。笑
そりゃフィニックも爆笑してその場を立ち去りたくなりますよねえ。←
かくしてニックの協力を取り付けたジュディ。
彼と一緒に手がかりを巡り、オッタートンが行方不明になる前の足取りを追います。
このシーンで出会う個性的な登場人物も見逃せません。
オッタートンが常に通っていたという”クラブ”のオーナーであるヤックスは、「動物が自然が一番」と常に裸で過ごし、体も洗わず、いつも周囲にハエをたからせている…というなかなかすさまじいビジュアル。
動物が知性をもち、皆着ているのが普通の世の中で、常に裸で過ごす”クラブ”…という設定もなかなかですし、まあ否定も出来ないけれど、凄いな…と思うところです。
ニックの友人で陸運局に務めているフラッシュはナマケモノの男性。
ジュディとニックがヤックスから得たナンバープレートの番号を基に自動車の所有者を割り出して情報を提供する…というありがたい活躍をしてくれる人物ではありますが、種としてナマケモノであるため、言動から動作まで何もかもがとんでもないスローペース!
のーーんびり指を動かして、一つのボタンを押すのにも数秒かかり、会話のテンポものーーんびり、のーーんびり進む。
外野から見るとそれはあまりにコミカルなやり取りで、結構笑えてしまうんですが、本人(ナマケモノ)たちにとってはそれが”普通”なわけですからもう何も言えません。
さて、紆余曲折を経てニックとジュディは、最後にオッタートンが乗っていたのがツンドラタウンのリムジンであることを突き止め、二人で出かけていくのでした。
渋々…という形でありながら、なんだかんだでしっかり協力してくれるニック。良いやつです。笑
ミスター・ビッグと手がかり
ツンドラタウンのリムジンの持ち主は、マフィアのボス/ミスター・ビッグであることが判明。
過去に因縁のあるニックは咄嗟に逃げようとするも、手下のシロクマたちに捕まってしまい、あわや”冷凍”されかける羽目に。
ところが、ジュディが先の強盗事件で巨大ドーナッツから救ったネズミの女性が、ミスター・ビッグの娘であることが判明し、態度は一転。協力を得られることになりました。
ミスター・ビッグからもらった手がかりというのは、オッタートンは誘拐されたのではなく、突如として自ら暴れ出したらしい、という事実。
リムジンを運転していたレインフォレストに住む運転手を紹介してもらい、二人は直接会いに行くことになります。
が、二人が訪問し”夜の遠吠え”というキーワードを得たところで運転手の様子が急変。
いきなり四つん這いになり、ニックとジュディの命を狙って襲いかかってくるのでした。
ついさっきまで普通に話していた相手が、急に苦しみだしたかと思えば全力で襲ってくる。
ゾンビものの映画でありそうな描写で、シンプルに恐怖でしたね。。
その後命からがら逃げ切り、運転手を”証拠”として押さえてボゴ署長を呼ぶものの、その隙に運転手は行方不明に。
ボゴ署長はその場でジュディにクビを言い渡しますが、「まだ48時間の期限は来ていない」とニックがジュディをかばうのでした。
命を救われたこと、そしてこれまでのジュディを見てきたことで心を開き始めたニック。
ゴンドラの中で朝日とともに過去の傷を静かにジュディに語るニックの姿は、まるで今まで見せたことがないような弱気な姿で、そんな姿をジュディに見せたという事実に胸をぐっと掴まれましたね…!
行方不明の動物たちを発見
ベルウェザー副市長の力も借り、ジュディとニックは運転手が連れ去られた施設を発見。
そこではシンリンオオカミたちが衛兵として警備をしており、”夜の遠吠え”の正体がオオカミのことだと理解した二人は、施設への侵入を試みます。
中に入ると、そこには行方不明になったすべての動物たちが、皆まるで野生に戻ってしまったかのような凶暴な姿で、檻のような施設に閉じ込められていたのでした。
そこに現れたのは、ズートピアのライオンハート市長。
面食らったものの、市長の姿と言動を証拠として押さえたジュディは、ニックとともに何とか施設を脱出。
証拠を持ち帰り、見事動物たちの行方不明事件を解決に導くのでした。
これにて事件解決、めでたしめでたし!…ということにはならず。
事件の解決、そしてその真相をきっかけに、ズートピアは大きな分裂を迎えてしまうのです。
③事件の解決?とズートピアの分裂
晴れて事件解決するも、草食動物と肉食動物が分裂
行方不明事件は解決したものの、凶暴化した動物たちは元に戻ることは無く。
その上、凶暴化した動物たちの共通点として”肉食動物”であることがある、ということを記者会見で述べてしまったジュディ。
この発言をきっかけに、草食動物からの肉食動物への弾圧が始まり、ズートピアは草食・肉食とで真っ二つに分裂してしまうのでした。
分裂したのはズートピアだけではありません。
記者会見でのジュディの発言は、ニックに過去を思い出させ、ジュディへの信頼を失わせるのに十分な力を持っていました。
これ、ジュディ側に全く悪気がなかったのが、なお痛いところ。
ジュディ本人は、念願の捜査に携わり、事件を無事解決に導いたことで記者会見をする…、という事実に、平たく言えば舞い上がっている状態で、質問されたことに素直に答えただけなんですよね。
だからこそ、ニックには堪えた。
そうかこれがジュディの本心だったのだ、と。
すぐにジュディも自らの失言に気がついてその場をとりなそうとするも、両親からの勧めで最初からずっと持っていたキツネ撃退スプレーを指摘されてはそれ以上繕える言葉もなく。
二人はここで決裂し、ジュディはその後も自体の収拾に努めようとするも甲斐はなく。
挙げ句、”草食動物の代表”としてベルウェザー市長(元副市長)に、ZPDの顔になるように提案されるもそれを断り、警官の職も辞して、故郷へと帰るのでした。
”世界をより良くしたい”という願いを持っていたジュディにとって、自らの発言がきっかけでズートピアが分裂していく様を見るのはどれほどキツかったことか…と思わされます。
”夜の遠吠え”の正体とニック×ジュディのタッグ復活
故郷で傷心しつつにんじんの販売を手伝うジュディ。
そんなジュディに両親は優しく寄り添います。
我が子を心配するあまり、状況によっては”うざい”ともとれる言動をしてしまいがちなジュディの両親ですが、こういうときに無条件にすべてを受け入れてそばにいてくれる存在、というのは良いものだなあ…と思わされます。
そこに現れたのは、かつていじめっ子だったキツネのギデオン。
今やブルーベリーパイを販売し、ジュディの両親とも仲良くしている様子ですが、そんな彼らの会話によりとある重大な事実が発覚しました。
そう、以前ジュディとニックが運転手から聞いたキーワード”夜の遠吠え”。
これはオオカミの遠吠えのことではなく、実は食べると正気を失う危険な花のことを指していたのです。
凶暴化するのは肉食動物だけじゃない。
この事実を知ったジュディはいても立ってもいられず、フィニックから居場所を聞き出し、ニックの元へ。
自らの失敗を詫び、再び一緒に真相を突き止めてほしいと訴えかけます。
この時の二人のやり取りがとっても良いんですよね…!
「私はまぬけなウサギだった」と自らの過ちと失敗を認め、ニックに正面から詫びるジュディ。
そんなジュディに対し、かつて自分がやられたように、ジュディの”ニンジンペン”で彼女の音声を録音し、それを再生しつつニヤリと微笑むニック。
他の人と関わって行きていく限り幾度となく繰り返される「ごめんね」「いいよ」のやり取りですが、いかにもニックとジュディらしい粋なやり取りに思わずこちらもニヤけずにはいられません。
自らの失敗を真正面から認めて謝るジュディも素晴らしいし、自身もひどく傷ついたはず無のに、ニヤリと微笑んでジュディを受け入れるニックはとても格好良いです。
こうしてジュディは再びニックとタッグを組み、今度こそ”本当の黒幕”を見つけ出すべく街に再び繰り出していくのでした。
ジュディと両親、その両親とかつてのいじめっ子であるギデオン、そしてニックとジュディ。
それぞれほんの一瞬のシーンではありますが、どの関係も良くって、胸があたたかくなります…!
本当の黒幕は
ジュディとニックの二人は、かつて捕まえた玉ねぎ泥棒のデュークを通じて、”夜の遠吠え”を用いて毒薬を製造し肉食動物に打ち込んで凶暴化させていた羊のダグの存在を突き止めます。
激しい戦いと鉄道バトルの挙げ句、なんとか証拠品を確保しZPDに向かうものの、目の前に立ちふさがったのはベルウェザー市長でした。
そう、すべての黒幕はベルウェザー市長だったのです。
彼女は草食動物が社会の中で優位に立つために、”肉食動物は凶暴だ”として社会から追い出す、今の分裂したズートピアの状況を作るべく、裏で暗躍していたのでした。
ベルウェザーさん!!今まであれほどジュディに優しく味方してくれていたのに、黒幕だったなんて!
とはいえ冷静に考えれば、草食動物であるジュディに優しくすることと、彼女の目的のために肉食動物を凶暴化させることは別に矛盾していないわけなので、ある意味納得もしてしまいます。
しかもここで初めて、ズートピアの人口割合として草食動物が9割を占めていることも明かされました。
ううむ、そうなると確かにベルウェザーさんの計画はほぼ完璧で、人数的に優位な草食動物が肉食動物を迫害する方向に動けば、草食動物が優位に立つ世界が完成します。
日々ちょっと横暴なライオンハート市長のそばにいて、そういう気持ちになるのも納得ではあるんですが、とはいえ仮に計画がうまく運んで、草食動物だけの社会になった時、その先はどうなるんだろう…と考えさせられます。
結局草食動物だけになったとしても、当然それぞれの習性は異なるし、体の大きさも何もかも違う。
結局のところ”みんなが同じ”存在、というわけでは無いので、争いは絶えない状況になりそうです。
まあ、ベルウェザーさんに関してはおそらくそこまでは考えておらず、あくまで「憎き肉食動物に制裁を!」という行動原理で動いていそうですが…。
さて、そんなベルウェザーに立ち塞がられ、彼女の手下に襲われ再び大ピンチに陥るジュディとニック。
ですが、ここで二人は機転を利かせ、ZPDの応援が到着するまでの時間稼ぎとベルウェザーの自白の録音を完遂。見事彼女を逮捕することに成功するのでした。
こうして事件は解決。
原因が分かったことで、凶暴化した肉食動物たちも治療を受けることができ、ズートピアは平和を取り戻すのでした。
物語の冒頭でジュディがニックに使った”ニンジンペン”の録音手法。
この手法が、物語の一番大事な部分でこうして用いられるとは…!と鮮やかな決着の仕方でした。お見事!
ズートピアが楽園であるために
物語の最後のシーンは、警察学校の卒業セレモニー。
ズートピア初のキツネの警察官として学校を卒業したニックも含め、ジュディが代表して卒業生の前で祝辞を述べます。
私が子どもの頃、ズートピアを理想の地と思っていました。
みんなが仲良く暮らし、誰もが何にでもなれる。
でも現実の世界はもっと複雑です。標語通りにはいきません。現実はとても厳しい。
誰にも限界はあるし過ちも犯します。
でもだからこそ共感し合えるんです。
互いを理解しようとすれば、もっとみんなが輝けます。
でも努力しないと。
あなたはどんな動物でしょう。
最大のゾウに、初のキツネ警官。
皆さんに伝えたい。
努力を。よりよい世界のために。
こうして物語は幕を下ろします。
ラストには、晴れて正式にパートナーとなったジュディとニックがスピード違反の取り締まりとして、かつて陸運局でお世話になったフラッシュ(ナマケモノ)を捕まえる…というボーナスシーンがあり、最後まで楽しませてくれます☺️
エンドロールでは「♪Try EveryThins」の曲にのせ、皆がガゼルのライブを楽しんでいる様子が描かれます。とっても楽しそう!
総合的な感想
ジュディの成長、ニックとの出会いとバディとしての成長、ズートピアの社会とその闇、そして希望。
それらすべてを余すこと無く描き、なおかつ事件モノとしてもシンプルに面白い、非常によくできている物語だなと見るたびに思います。
各シーンのテンポも非常に良く、かと言って端折ってわかりにくくなっている場面も全く無いので、小さな子どもから大人まで、誰もが最初から最後まで楽しめる映画です。
最近のディズニー映画はこういう風に、気持ちよく、綺麗にまとまっている良作が数多く発表されていますが、中でも「ズートピア」は頭一つ抜けている作品なんじゃないかな~と思います!
そして何より、キャラクターがとっても良いんですよね、これが!笑
意思が強く、やる気に満ち溢れていて、明るく元気なジュディ。それでいて自らを省みる強さも持ち合わせているので、やる気に満ち溢れている人物にありがちな”痛い”感じもなく、純粋に見ているだけで大好きになれるキャラクターです。
そんなジュディとバディを組むニックもこれまた魅力的。つらい過去を抱えつつ、自らの能力で生き抜き、かつジュディを信頼する強さも持つ。
どことなく「塔の上のラプンツェル」に登場するユージーンと被るキャラクター設定ではありますが(笑)、こういうキャラクターが嫌いな人はいないでしょう。格好良い。
脇を固めるキャラクターもこれまた魅力的で…。
個人的にはZPDの受付担当のクロウハウザーが大好きですね~!笑
ドーナッツが大好きな自分が大好きで、仕事中にガゼルの動画を見ちゃうところや、思わぬ共通点を見つけてボゴ署長に親近感を覚えちゃうところも、見ていて可愛くて仕方がないです。
クロウハウザーが近くにいたら、なんだか毎日ハッピーに過ごせそうですよね。一家に1台、クロウハウザーを希望します。←
そうしたキャラクターたちが生き、過ごすズートピアという街そのものも魅力的ですし、見ていてずーっとワクワクできるのがこの映画の良いところ。
今作ではズートピアのエリアのうち”サハラスクエア”については触れられていなかったので、今後もっとよく街を知ってみたいなと思うところです。
明るい中でも現実の厳しさを描く
さて、ズートピアという作品はそんなふうに、魅力的なキャラクターとテンポの良い展開で物語を進めていきますが、その実描かれているのは”現実の厳しさ”という部分。
誰でも何にでもなれる、という標語をうたう街でありながら、初めてのウサギの警察官であるジュディは差別され迫害されますし、力のある肉食動物と草食動物とでは担える役割が違うことから上下関係が発生する。
各動物間でも、それぞれの体の大きさや習性が異なることから、それぞれに差別や迫害が存在する。
明るく綺麗な大都会であるズートピアの影には、そんなどこまでも厳しい現実がしっかりと横たわっているのでした。
ディズニー作品では度々動物がまるで人間のように振る舞って、独自の社会を築くような作品が存在します。
そもそもあのミッキーマウスだってネズミですし、ディズニーの世界においては”動物がまるで人間のように”生きている世界は比較的普通のことです。
ただ、ズートピアが異質なのは、確かに動物が人間のように社会を築いている状態ではありますが、あくまでその動物は動物として生きているんですよね。
ネズミは体が小さく独自のコミュニティでないと生活が出来ませんし、ウサギは力が弱く体も小さい。
キツネはずる賢いという偏見が根づき、シロクマは寒い地域でしか生きられない。
ミッキーマウスやドナルドダックが自らの”動物”としての習性を完全に捨てているのに対し、ズートピアで生きる動物たちは、あくまで自らは”動物”として生きています。
そして、それ故に発生する軋轢や問題、課題を真正面から描いて、一つの答えを導いている作品である、というわけです。
これがズートピアが単なる明るいファンタジーなアニメとは、大きく異なる部分です。
だからこそ、実際に”現実”の厳しい世界を生きている我々にとっても、しっかり心に届く作品になっているんじゃないかなと思います。
最後にジュディが示した一つの答え、「努力を。よりよい世界のために。」という言葉は胸にしっかりと留めていきたいと思います。
ズートピア2への示唆
さて、ズートピアは続編となる『ズートピア2』が2025年冬に公開される予定です。
改めてそういった目線で今作を見返してみると、少しだけ気になる示唆がされている部分があるんですね。
一つは、ズートピアには哺乳類しかいない、ということ。
よくよく見返してみると、冒頭のZPDの警察学校のシーンや、ズートピア特急で移動しつつズートピア各所を案内する際に、「ズートピアはすべての哺乳類の楽園」という言い方をしているんですよね。
動物、という括りであれば、他にも鳥類や爬虫類も存在するはず。
『ズートピア』の時点では脚本家の方は「作品の舞台となる惑星には爬虫類や鳥類も存在するが、今回はそれらが暮らす大陸の話ではなかっただけ」と述べていますが、『ズートピア2』ではその点にスポットが当たることが予告編から分かっています。
この点の種明かしがどのようなものになるのか、楽しみですね。
もう一つは、「ズートピア以外の街」に若干言及している場面があること。
肉食動物と草食動物が分裂した際にガゼルが「皆がこんな風に仲良く暮らしているのはズートピアだけ」と述べるシーンがありますが、そういう言い方をする時点でズートピア”以外”があるのは確実。
もちろん、作中にも登場していたジュディの故郷も”以外”には当たるのだと思いますが、もっと広い意味での”外”があるようにも思われます。
『ズートピア2』が一体どんな展開を迎えるのか、今はまだわかりませんが、今作で示唆されていたことに対する”真実”が明かされるのかもしれません。
いずれにせよ楽しみに待ちたいと思います☺️
まとめ
今回の記事では、映画『ズートピア』について、ネタバレ感想をお届けしました。
- ジュディの“何度折られても立ち上がる”成長物語が、とにかく前向きなパワーをくれる
- ニックとのバディ関係が最高。軽口を叩き合いつつ、互いの過去と弱さを受け入れていく過程が尊い
- ズートピアという街の作り込みが異常に細かくて、何度見ても新しい発見がある(ツンドラタウン/レインフォレストなど)
- 「誰でも何にでもなれる」と謳いながら、差別・偏見・分断が根強く残る“現実の厳しさ”もしっかり描いている
- 肉食動物 vs 草食動物の対立構造が、現実社会の“マイノリティ/マジョリティ”問題やヘイトにそのまま重なって見える
- それでも最後に「努力を。よりよい世界のために。」というメッセージに着地することで、ちゃんと希望で終わらせてくれる
- キャラクターが全員魅力的で、ジュディ&ニックはもちろん、クロウハウザーやミスター・ビッグ、フラッシュなど脇役まで忘れられない
- 『ズートピア2』で“哺乳類以外”や“ズートピア外の世界”にどう踏み込んでいくのか、今作の示唆を踏まえてますます続編が楽しみになる一本
「ジュディの『努力を。よりよい世界のために。』という言葉は、ズートピアの物語だけでなく、今を生きる私たちにもそのまま返ってくるメッセージだと思います。
かわいい動物映画として子どもと一緒に楽しむのはもちろん、“社会派ディズニー”として大人だけでじっくり見返したくなる一本でした。
ズートピアが好きな方も、これから初めて見る方も、作品を振り返るきっかけになれば嬉しいです☺️
BeePlus【びーぷらす】では、他にもディズニー作品の解説、ネタバレ感想&考察を行っているため、合わせてチェックしてみてください~!
また、ディズニー長編アニメーション映画一覧については以下記事にまとめています。
「ディズニーアニメって他に何があるの?」「いまどれくらい見たことがあるんだろう?」とお悩みの方は、ぜひこちらも見てみてください。



