実写映画『リロ&スティッチ』ネタバレ感想&考察|原作ファンが語る違いと結末の解釈

こんにちは、ゆーです!
今回の記事では、2025年6月6日(金)に公開されたディズニー実写映画「リロ&スティッチ」についてネタバレありで映画の感想&考察をお届けします◎
東京ディズニーリゾートでも人気のキャラクター・スティッチの物語を描く心温まる作品を、23年の時を経て実写化した本作品。
久しぶりに映画館に帰ってきたスティッチの物語について、原作との違いや感想&考察まで詳しくお届けします◎
原作から変わった部分も、踏襲された部分もある”リメイク”版である実写版。
23年のときを感じつつ、楽しんできました~!


映画概要・あらすじ『リロ&スティッチ』
劇場公開日 | 2025年6月6日 | ||
---|---|---|---|
監督 | ディーン・フライシャー・キャンプ | ||
原題 | Lilo & Stitch | ||
上映時間 | 108分 |
ディズニーの人気アニメシリーズ「リロ&スティッチ」を実写映画化。ハワイを舞台に、地球に不時着した暴れん坊のエイリアンのスティッチと、ひとりぼっちの少女リロの出会いと交流、家族の絆を描いたハートフルファンタジー。
両親を亡くした少女リロと姉のナニ。ひとりでリロを育てようと奮闘するナニだったが、若すぎる彼女は失敗ばかり。離れ離れになってしまいそうな姉妹の前に、見た目はかわいらしいのに、ものすごく暴れん坊な不思議な生き物が現れる。その生き物は、違法な遺伝子操作によって破壊生物として生み出された、「試作品626号」と呼ばれる地球外生物(エイリアン)だった。そんなことは知らずに、リロはその生き物を「スティッチ」と名付けて家に連れ帰る。予測不可能なスティッチの行動は平和な島に混乱を巻き起こすが、その出会いがやがて思いもよらない奇跡を呼び起こし、希望を失いかけていた姉妹を変えていく。
【ネタバレ感想】
以下より物語のネタバレを含みます
①スティッチとリロの出会い
スティッチとリロ。
その二人がどんな背景を持ち、そしてどのように出会いを果たしたのか。
そんな二人が出会う前の様子を描くところから始まります。
スティッチの逃走
物語は、銀河連邦本部のシーンからスタート。
ジャンバ・ジュキーバ博士が、違法の遺伝子実験を行い”生命体の創造”をしたとして銀河連邦本部から告発を受けているシーンが描かれます。
ここで創造された生命体、というのが、スティッチ。
このあたりの展開、そしてスティッチに関する説明はまさに原作そのもので、思わずフフッと笑顔になってしまいました。笑
この時点ではまだ”スティッチ”という名前はなく、”試作品626号”という呼び名を与えられています。
その後議会で永久追放処分が決まるものの、パトロール艇を盗み出して逃走。
たどり着いた先は、地球、ハワイのカウアイ島でした。
原作に比べて”ガントゥ”が登場しない分、かなーりサクサクと進む序盤でした!
議長の部下が笑顔で「地球ぶっ壊しますか??」と言っていたのが印象的。笑
リロの孤独
一方ハワイのカウアイ島では、魚たちと海を泳ぐ5歳の少女・リロの姿が描かれ、「リロの歌」に乗せてタイトルコールがなされます。
このシーンの展開は原作そのもの…!
実写化されることで、よりリアルに描かれるカウアイ島の海の美しさとフラダンスの良さがダイレクトに入ってきましたね。
途中リロがリゾートホテルの宿泊客を装ってジャグジーを使っていたシーンも差し込まれており、現代人の”ハワイ=リゾート”というイメージも引き継いでいるのが印象的。
海で魚の餌やりをしていたリロは、フラダンスの発表会にぎりぎり駆け込み。
ですが、発表会に姉・ナニの姿が無いことと友達に嫌味を言われたことがきっかけに、友達を突き飛ばし発表会をぶっ壊すのでした。
このあたりのリロの豹変っぷり、そしてその後のナニとの喧嘩っぷりもまさに原作そのもの。
喧嘩の挙げ句、クッションに向かって(リロはベッドに向かっていたけれども)二人同時に叫ぶシーンまで同じで、おおお…!と思わず声を上げてしまいました。
若干実写になった分、喧嘩はマイルドになっていた感じも。
ナニの苦悩と別れの危機
姉のナニ。作中での設定は19歳と非常に若く、両親を失って日が浅いこともほのめかされます。
ナニ自身もおそらく両親の不在を消化できておらず、でもリロを守り育てなくてはならない責任もあり。
そんな折に福祉局のソーシャルワーカーの横槍が入り、このままではリロと離れ離れで暮らさなくてはならないという崖っぷちの状況。
そんな原作の設定に加え、実写版では実は成績優秀で、大学の合格通知をもらっており、なおかつ無料で通える状態まで手にしている…という設定も追加。
さらには、今にも壊れそうな車をずっと使っていたり、医療費の保険に入ることができていなかったり、とどこまでも現実的な”お金”の問題も示されました。
実写化して、現実の要素が加わったことでよりシビアな状況が差し迫ってきますね…。
特にお金の問題まで絡んでくると、福祉局員いわく”意地を張って”リロと一緒に過ごすことが幸福とは思えない、という状況になってきます。
ちなみにここでリロとナニの生活に首を突っ込むソーシャルワーカー、原作では強面のコブラ・バブルスという人物でしたが、実写版では女性のケコアさんという人物に変わっていました。
おお、ここはコブラじゃないのか!と思いつつ、この人物もまた良い雰囲気で。
最初からどこまでもリロとナニの気持ちに寄り添い、二人がより良い生活になるよう心を尽くしている感じがとても伝わってきます。
だからこそナニも悩むんだろうなあ…、と。
まあ隣人のトゥトゥには「あんな胡散臭い笑顔を貼り付けている人は信用ならない」と切り捨てられていますが。笑
その夜、試作品626号がカウアイ島に不時着。
物語が動き出します。
不時着した宇宙船を「流れ星だ」と勘違いし、願いをかけるリロ。
その願いは、原作同様「ずっと一緒にいてくれる友だちが欲しい」というものでした。
孤独なリロとスティッチが出会う
翌日。リロは隣人のトゥトゥの許可を得て、保健所へ。
一方不時着するとともに近場でやっていた結婚式を荒らしまくり、挙げ句観光バスに轢かれるという事故にあった試作品626号は、犬と間違えられて保健所で保護されていました。
結婚式を荒らすシーンが追加されていますが、どちらかというと破壊本能ではなく、美味しそうな食べ物を得るために暴れている感があったのが印象的。
なんとなく、原作のスティッチの最初の頃は破壊本能に支配されてもうどうしようもない存在のように描かれていましたが、実写版は最初から破壊本能”だけではない”ことがちょくちょく仄めかされている感じでしたね。
そして、二人は出会った。
リロは、ずっと一緒にいてくれる友だちを求めて。
そして試作品626号は、自分を捕まえに来たジャンバとプリークリーを遠ざけるために。
お互いの思惑は異なれど、こうして二人は出会い、リロは試作品626号に”スティッチ”という名前をつけ、犬として家族に迎えるのでした。
スティッチ、という名前の由来はナニが運転する車を傷つけ、縫う必要が生じたことから。
原作では明かされなかった名づけの経緯がちらっと追加されていましたね~!
②スティッチとのなかなかうまくいかない新たな生活
晴れてスティッチを迎えたリロ。
みんなに不気味がられるのも構わず、リロはスティッチを可愛がるのでした。
暴れるスティッチに振り回される1日
とはいえスティッチはあくまで犬のふりをしているだけで、正体は破壊本能を秘めたモンスター・試作品626号なわけで。
リロの友人のミニカーのようなもの(原作では三輪車)を奪い、暴走するシーンもありました。
挙げ句には、ナニの職場であるレストランでリロといたずらに興じた末にお客さんのテーブルを燃やしてしまい、ナニはその責任をとってクビを言い渡されてしまいます。
この日一日スティッチに振り回されつつも、そんなやりたい放題のスティッチとの時間を楽しんでいたリロ。
レストランのシーンでは、スティッチのいたずらを止めようとしつつも、最終的には二人揃って暴れまわることに。
リロもスティッチも、だめだと分かっていつつ寂しさから”悪いこと”を行ってきた同士。
そんな二人が出会って、1日を過ごすことで、すでに確かな絆が芽生えていることがよく分かる描かれ方をしていましたね…!
さて、散々な1日を終えて家に帰った後も、スティッチはやりたい放題。
福祉局員に言われてナニが家を片付けたにもかかわらず、家にあるものを手当たり次第にぶっ壊し、ミキサーにカトラリーをぶち込んでぶちまけ、思いつく限りの破壊の限りを尽くします。
暴れるスティッチに耐えかねたナニはスティッチを追い出そうとしますが、ここでリロはこう言い放ちます。
オハナは家族。家族はいつもそばにいる。何があろうと。
その言葉を受けてナニはつとリロに向き合い、「現実を見て」と言い放ちます。
原作ではリロが持ち出した”オハナ”に観念してスティッチを認めたナニですが、そこをこうシビアに持ってきたな…という印象でした…。
スティッチとフラダンス
一方のスティッチ。
破壊の限りを尽くしたものの、全く満たされない自身に戸惑いを覚えます。
たまたま不時着したカウアイ島は自然たっぷりの島。
本来スティッチの破壊本能を満たすような発達した都会もなく、やり場を失った衝動と本能に戸惑いがある様子です。
そんな中、リロの写真の中からフラダンスを見つけます。
「やってみたい?」と声をかけるリロ。
そしてリロが歌う「アロハ・オエ」の曲に乗せ、二人でフラダンスを踊るのでした。
原作ではスティッチが「みにくいアヒルの子」を見つけていたシーン。
よりリロとの関係が深まるようなシーンになっていましたね~!
ナニの仕事探しとスティッチの躾
翌日。ナニは必死の仕事探しに向かいます。
一方リロも、スティッチを1人前にすべく躾を開始。
ところが、ナニもリロも思い通りには進まず。
ナニの仕事は見つからないし、というか全般的にスティッチが原因で断られてしまうし、スティッチ自身も破壊本能を抑えきる事もできないし…という状態です。
意気消沈した二人でしたが、ナニの恋人(未満?)であうデイヴィッドがナニにサーフィンインストラクターの仕事を持ち込み、皆で海へ。
「ハワイアン・ローラーコースター・ライド」の有名なリズムに乗せ、ナニはインストラクターの仕事に精を出し、リロとデイヴィッドはサーフィンを楽しみます。
最初は水を強がり近づこうともしなかったスティッチですが、徐々に心を動かされ、犬と一緒にサーフィンを楽しむ人の姿を見たことをきっかけに、リロに声をかけます。
そしてリロ・ナニ・スティッチの3人は一緒にサーフィンを楽しむことに。
原作でも綺麗で気持ちの良いシーンでしたが、実写版は、やはり凄い。
きらきらと輝いて波打つ海をサーフボード1枚で駆けていき、風を受けてスピードに乗る…。
めちゃくちゃ良い。楽しそう。
「ハワイアン・ローラーコースター・ライド」の楽曲も相まって、ハワイの魅力、サーフィンの魅力を存分に感じられる素敵なシーンでした。
実写版だからこそ味わえるこのサーフィンのシーンの見事さ、とっても良かった!
リロとナニに訪れる試練とスティッチの心境の変化
ところがそんなサーフィンの最後、スティッチを狙うジャンバに巻き込まれたリロは、溺れかけてしまいます。
危うくリロもスティッチも助け出されたものの、リロを施設に連れて行くことが決定事項となってしまうのでした。
リロとの別れを覚悟したナニは、その夜、リロと二人っきりで話をします。
夜のカウアイ島。
星がまたたき、火が燃える本当にこれも美しい情景の中、描かれる二人の会話はどこまでも切なく。
ここで再びリロとナニによって歌われる「アロハ・オエ」の歌詞がぐーっと心に沁みるシーンでした。
一方スティッチは、リロを傷つけ、リロとナニの生活を傷つけたことに自責の念に駆られ、自ら家を出ることにするのでした。
切なく、綺麗なこのシーン。「アロハ・オエ」の音楽が静かに沁みますね。。
③様々な思惑が絡み合う展開とフィナーレ
スティッチを迎えに行くリロ
一人家を出ていき、元の保護施設に戻っていたスティッチ。
そこへリロがやってきて、改めてスティッチを迎え、力強くハグを交わします。このときのスティッチが嬉しそうで、見ているこちらも嬉しくなりましたね…!
ですが、そこへジャンバが登場。
銀河連邦からクビを言い渡され、もう銀河連邦のためにスティッチを連れ帰るのではなく、あくまで自身の研究のためにスティッチを捕獲すべく乗り込んできたわけです。
そしてここから追いかけるジャンバと、逃げるスティッチ&リロのシーンがスタート。
原作にはなかった”空間をワープする銃”を巧みに使った戦闘シーンはなかなかおもしろかったですね~!
最終的に追い詰められたジャンバは、スティッチに「お前がいるとリロがもっと不幸になる。リロのことを思うならこっちへ来い」と精神攻撃を仕掛けてきました。
おお、やることがだいぶあくどいぞ、ジャンバ。
挙げ句スティッチはリロと別れてジャンバについていく選択を取りジャンバの宇宙船に乗り込むのですが、それを許すリロじゃあなかった。
スティッチを救うべく、一緒に宇宙船に乗り込んでしまうのです。
この時点で、リロを思って一度リロの元から離れようとするスティッチの姿が切ない。
ナニ&トゥトゥ&デイヴィッド&コブラ&プリークリーのチーム結成
さてリロとスティッチがガントゥとともに宇宙に飛び立った後。
その場に集まったナニ&トゥトゥ&デイヴィッド&コブラ&プリークリーがそれぞれの正体を明かし、リロを取り戻すべく共同戦線を張ることになります。
最終的には、リロとスティッチはガントゥを倒すものの、宇宙船は海に不時着。
溺れかけるリロでしたが、駆けつけたナニとデイヴィッドによって救出。
一方スティッチは水の中で沈んでしまい、助け出そうとしたリロの手を自ら離すのでした。
”スティッチは水が苦手”という事実をここまで明確に描くのか、と驚いたこのシーン。
単に苦手なだけではなく、水を含むと文鎮のように重くなり、浮き上がってくることができない…というわけだったんですね。
自らリロのためにその手を話し、「アロハ・オエ」のフラを踊るスティッチの姿は、どことなく「ベイマックス」のラストに重なる部分がありました。
そんなスティッチに救いの手を差し伸べたのは、リロの思いに心を動かされたナニ。
持ち前に身体能力で、海の底に沈んだスティッチを抱え、なんと水の底を走って救出します。
それは、普通に、身体能力が凄すぎる。←
やっとのことで救い出されたスティッチ。
車の電力を利用した電気ショックにより、見事息を吹き返すのでした。
このあたりの展開が一番原作からわかりやすく変わっていた部分でしたね!
個人的には宇宙船同士の空中戦が見られなかったのは少し残念。(SW好き)
銀河連邦本部の出動
全員無事で一件落着…、と思いきや、銀河連邦の議長が襲来。
あえなくスティッチは捕まってしまいます。
議長に許しをもらい、リロ・ナニと最後のお別れをしようとするスティッチ。
そんなリロとナニについて「あなた方は?」とと問われ、スティッチはこう返すのでした。
ボクノカゾク
カテイホウカイ、でもイイカゾク
原作と変わらず、スティッチが自らの言葉でリロとナニの事を伝えたこのシーン。相変わらずとても良いです。
この言葉に、議長は「議会の決定は変えられない」としつつも、「スティッチの永久追放先を地球とする」ということで、スティッチとリロ・ナニが一緒に暮らすことを認めるのでした。
ナニの選択
晴れて皆が一緒に暮らせるようになったものの、リロとナニを取り巻く問題は解決していませんでした。
ところが、そこで助け舟を出したのが、隣人のトゥトゥ。
ナニに代わりトゥトゥが里親としてリロを引き取るというのです。
これなら今のリロとナニの家とトゥトゥの家は隣同士なので、今までと変わらぬ暮らしができると喜ぶナニでしたが、それを止めたのは他ならぬリロでした。
リロは知っていました。自分のためにナニが大学を諦めようとしていることを。
だから言った。
「ナニは海兵隊(大学。海洋生物学のことをリロは海兵隊と言っていた)に行って。」と。
そんなリロの後押しも合って、ナニはハワイを出て大学に行くことを決意。
リロはトゥトゥやデイヴィッド、プリークリーにコブラ、そして何よりスティッチとともに家を建て直し、新たな生活を送るのでした。
原作とはまたちょっと変わった形でありつつ、綺麗なハッピーエンド!
原作と実写版との違い
ガントゥの不在とジャンバのヴィラン化
最も分かりやすかったのが、これ。
原作では、最初に議会で追放が決定されたときや、最終的にスティッチを追い詰める立ち位置の銀河連邦に務めるガントゥが実写版には登場しません。
冒頭の銀河連邦でのシーンは、ガントゥが不在であるがゆえに想像以上にサクサク進んで驚きましたね…。笑
そんなガントゥの代わりに、最終的にスティッチを追い詰める役を担ったのは、スティッチの生みの親であるジャンバ。
原作ではプリークリーと一緒にスティッチの捕獲を試みるも、最終的にはナニとリロの味方となって立ち回ってくれ、挙げ句にはリロたち一家に”オハナ”として認められるような関係になるジャンバですが…
実写版では、終始見事なマッド・サイエンティストぷりを発揮してくれ、スティッチをギリギリまで追い詰める存在となっていました。
原作でガントゥがスティッチの捕獲を試みていたのは、あくまで銀河連邦のお仕事として。
一方、実写版でジャンバがスティッチを追い詰めていたのは、完全に自身の研究者としてのエゴのため(せっかく作った試作品を手放してなるものか!的な)でした。
と、いうわけで、原作では本作品を”明確なヴィランがいない作品”と書きましたが、実写版は打って変わってジャンバが見事なヴィランになりましたね。
個人的にはまあありかな、と思う展開。
確かに原作だと、直前までスティッチを捕まえてバラバラにしようとしていたジャンバが、ナニの説得を受けてあっさり心変わりする部分に違和感があったりします。
その点、最初から最後まで見事なマッド・サイエンティストを貫いた実写版のほうが分かりやすい印象ではありますね。
実写化にあたりリストラされてしまったガントゥは気の毒ですが、途中途中「人間などという下等生物」というようなヴィランらしいセリフを差し込んでくるタイプのジャンバも嫌いではなかったです。笑
最終的にスティッチを捕まえて改造しようとするときに、ちらりと試作品624~627号の姿が登場したのも個人的には胸熱でしたね…!
”潜入”と称して人間化するジャンバ&プリークリー
さて、そんなジャンバと、ジャンバとともに地球にやってきたプリークリー。
原作同様、スティッチを追跡すべく行動を進めるのですが、ここで原作にはなかった”地球に溶け込む”ために人間に偽装する、というギミックが入るんですね。
これは、面白かった。
人間化した直後に”歩くのが難しい”という描写が入るのはお決まりのパターンですし、そこからプリークリーが人間の服を着てはしゃいだり、一方ジャンバが人間を「下等生物だ」と吐き捨てたり…とまあ思わずクスッと笑ってしまう描写が良かった。
そしてこれは俳優さんの演技力の賜物だと思いますが、人間化してもジャンバとプリークリーであることが一目でわかるのが凄い。
特にプリークリー。
あの絶妙にうるさくて、イライラさせてくれ、でも憎めないようなお騒がせっぷりを、姿形が変わっても違和感なく、むしろプラスアルファされる形で演じているのは、凄い。
原作とは違う展開でありつつも、これは非常に面白いポイントでした~!
デイヴィッドの立ち位置の違い
ナニの恋人(?)として登場するデイヴィッド。
原作では単にナニに思いを寄せている同じバイト先のファイアダンサー…くらいの関係性でしたが、実写版ではそこに”隣人”という要素が付け加えられていました。
これも、良いポイント。
”隣人”であり、かつデイヴィッドの母親は昔からリロとナニを知っている、という関係が明らかになるにつれ、デイヴィッドとナニは幼馴染だったのかな?という想像が広がるのもなお良い。
だって、幼馴染で、一人(ナニ)は頭が良くサーフィンもできて、もうひとりは頭は分からないけれどファイアダンサーとして食っていけるほどの実力をもち、同時にサーフィンもできて…という関係。
うーん、良い。←
"幼馴染”、って良いですよね。(まあ一言もそんなことは言っていないので推測ですが。)
コブラの立ち位置の違い
原作では「強面の福祉局員、実は元CIA」という二面性をもつコブラでしたが、実写版では元々CIAの人であることが明かされ、後にスティッチを見かけたことをきっかけに福祉局員として潜入調査をする…というように微妙に前後関係が変わっていました。
まあぶっちゃけ大きな変更ではないのですが、個人的には「元CIAなのに、福祉局員」という原作の意外性のほうが面白かったかなあ、という印象。
特に、ラストシーンの銀河連邦の議長とコブラが交わす、
コブラ「本部に同報告すればいい」
議長「それは私もです」
…という部分の会話が好きだったので、これが見れなかったのはシンプルに残念。
こっち(実写版)のコブラさんは、昔地球を救った経験は特にないのか…。
地味に、「地球は蚊の繁殖地として有用」という事実も、コブラが昔地球を救った事実が無いとなると若干宙に浮いてしまうのも残念なところ。
なんでもなさそうな顔で「実は昔地球を救った」というシーン、地味に好きだったんです…。笑
ナニの最終的な選択の違い
物語の結末に大きく影響する、個人的に最も大きな改変だと思う箇所がこれ。
原作では、
オハナは家族。
家族はいつもそばにいる。何が合っても。
…という教えのもと、最終的にナニはリロと離れ離れになることなく一緒に生活することができ、ハッピーエンドを迎えます。
一方の実写版は、なんとナニが成績優秀で、海洋生物学の大学の合格をもっており、さらに学費もかからない(おそらく奨学生的なやつ)状態であることから、最終的にはリロやデイヴィッドの後押しもあり、ナニとリロは別れて住むことになります。
この実写版の結末には驚きました。
”オハナ”をメインに描く『リロ&スティッチ』という作品である以上、リロとナニが離れる、という選択肢だけは無いと思っていた手前、青天の霹靂でしたね…。
ただ、このナニの選択は全く持って唐突なものではなく、作中で細々と、でもしっかり描かれていました。
このあたりの展開は非常に上手い。
それ故に、最終的にはナニの希望に沿う形の決断でありつつ、決してナニがリロを蔑ろにしたわけではなく、むしろリロの後押しが合ってこその決断であることが見ているこちらには非常によく伝わります。
原作では、家族はなにがあってもいつもそばにいるもの、として描かれました。
それから20年以上の時を経て、”家族”という形も変わってきた。
そうして、今作実写版では、「完璧じゃなくても家族は家族」というメッセージが強く語られたような気がします。
20年前と比べて、様々な価値観も、世界のあり方も変わった現在。
そういう時代だからこそ、こうやって物語の結末を大きく変えて、伝えたいメッセージがあったのかなあ…というように受取りました。
でも、個人的にはリロとナニは一緒に居てほしかったよ!!泣
でもまあ、ジャンバから奪ったワープガンを使っていつでも直接会えそうなので、まあ、ギリギリ許す…!
リロとスティッチが関係を深める過程の違い
最後に、個人的に強く感じたのはこちらのリロとスティッチが関係を深めるまでの過程に、原作と実写版とで微妙な違いが合ったなあ、ということ。
原作では、当初スティッチはなりふり構わず本能のままに暴れまわりますが、それに対しリロは眉を潜めつつ、そんなスティッチを止めようとしつつ、なんとか”いいコ”になるよう努めます。
そんなスティッチが変わるきっかけになったのは2つ。
一つは自分のせいでリロとナニが別れることになると知ったこと。もう一つは「みにくいアヒルの子」の物語に自分の姿を重ねたこと。
これによりスティッチに良心が芽生え…、という展開でしたが、実写版は少し異なりました。
実写版の場合、当初スティッチがなりふり構わず暴れるのは同じですが、リロもそれに同調して一緒に暴れています。
スティッチの破壊本能を”いたずら好き”と称し、寂しい思いをしているリロの心がそこに重なり、同じ行動を取ることで徐々に心が近づいていくんですね。
それにより、スティッチが原因でリロとナニが別れる事になったとき、スティッチは自ら”リロのために”身を引く決断を下すのでした。
そこに「みにくいアヒルの子」の物語は必要なく。
あくまで、スティッチとリロは馬が合い、それ故に心が近づき、確かな絆が生まれる…という過程を描きます。
人と人との間に”絆”が生まれる過程はそれぞれ。
その過程のトレンドが、20年の時を経てまた移り変わってきた、ということなのかなと思います。
原作ではスティッチが暴れる度にひたすら止めに入っていたリロですが、実写版ではスティッチと一緒にいたずらに興じるリロ。
その姿はとにかく楽しそうで、でも本人はそれが”悪いこと”だと分かっているわけで、それ故の切なさも感じずにはいられませんでしたね…。
原作、実写版、どちらの展開も双方違って両方良いものだなあ…と思います。
まとめ
今回の記事では、ディズニー実写映画『リロ&スティッチ』について、ネタバレ感想をお届けしました。
- 原作の良さを残しつつ、現代的な“家族のかたち”を描いた感動作
- スティッチとリロの絆が、いたずら心から徐々に“本当の家族”へ変化していく流れが秀逸
- ジャンバのヴィラン化やナニの進学など、大胆な再構築が物語に深みをプラス
- カウアイ島の自然美とフラダンス、音楽が織りなす映像体験が圧巻!
自然豊かで美しいカウアイ島を舞台に描かれる、家族の物語。
実写になりその美しさがより際立つ中で、原題ならではの要素も取り入れながら、あくまで基本は原作に忠実に描かれた今回の実写版。
原作と異なる部分はあれど、それ故になにかが悪くなるわけでもなく、総じて”これはこれでありかな”と思える内容だったのもホッとしたポイントです。笑
総じて大満足、見て損のない良い作品だなと思いました!やっぱり実写化はこうでなくっちゃ。
実写版『リロ&スティッチ』を楽しんだ後は、ぜひ原作版も改めてチェックしてみてください。
また、原作アニメ版ではリロとスティッチの物語はこの後も続きます。
スティッチの”イトコ”が登場する物語は、続編映画が3作品に、アニメシリーズが2作品と非常に盛りだくさん。
そんなスティッチの作品について、「どの順番で見ればいいの?」「どんな作品があるの?」といった情報を別記事でまとめているので、合わせてチェックしてみてください😎